手術について
脊椎疾患の手術療法
当院では、脊椎の手術が必要な患者さんが年々増加傾向にあり、平成29年には手術件数が230件、平成30年には200件の手術を行っています。
下の写真のように手術を行っています。
下の画像は腰椎の神経の通り道(脊柱管)が術前ものすごく狭くなっている状態を内視鏡手術で片側進入両側除圧(片方からの手術で進入側と反対側の両方の除圧を行う手術)で神経の通り道を大きく広げる手術をしたものです。
術前は矢印の部分に白い部分(神経の余裕)がまったくありませんが、術後は余裕が十分にあり、神経症状が改善しました。頚椎疾患に対しては、脊髄症状の強い方には椎弓形成術(脊髄の通り道を広げる手術)や、上肢の神経痛が強い方には椎間孔拡大術(頚椎の神経根を後方から顕微鏡下に除圧する手術)などを行っております。
前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament, ACL)再建手術
病気のこと
おとなしく生活して様子を見ることももちろん可能です。しかし生活上で不安定感がよくおきる人は不都合なことが多いと思います。また不安定な膝では半月板損傷などほかの損傷を起こす可能性が高くなりますし、年をとるとおこる変形性関節症(関節軟骨が磨り減ること)の症状が早く出現します。
治療
手術方法
膝の内下方を約5センチ切開し、大腿部内側後方に走る半腱様筋、薄筋を採取します(約25センチの長さ)。もともと前十字靭帯がついていた大腿骨、下腿骨の部分にトンネルを開け、骨の中に採取した腱を半分に折ったものを誘導し、大腿骨側はネジの先についた細い棒のところに引っ掛けて固定し、また下腿骨側はたくさんのピンがついたワッシャーで腱を押さえ込んで、金属のネジで固定します。
(非常にまれに半腱様筋、薄筋がうまく採取できない、細すぎる、などの場合には膝蓋靭帯を再建靭帯として採取することがあります)
断裂した前十字靭帯(図中央)と採取する腱(左下)
再建手術後
不安定感が軽減する
将来的に半月板損傷や変形性関節症をおこしにくくなる
手術によるデメリット
手術創周囲の違和感が残る(特に下腿前面の知覚低下、しびれなど)
不安定感の改善と引き換えに、しっかりとした関節になり、完全に伸びない、正座ができないなどが起きることがある
手術直後
後療法(リハビリテーション)
手術の前からリハビリを始めます。手術前は現在の状態の評価、筋力増強訓練、術直後の運動指導、などを行います。手術によって新しく作った靭帯は骨としっかりくっつくまでには数ヶ月かかるため、一般に行われている手術方法では術後しばらくは完全に伸ばすこと、曲げることを禁止したり、再建靭帯に負担をかけないようにするために大きな装具を装着しています。しかし現在当院で行っている手術法では靭帯を強力に固定できるため、術後2,3日で装具なしで歩行許可をしています。手術後は主に以下の運動を中心にリハビリが進みます。
1)筋力をつける練習
膝を伸ばしたまま下肢全体を持ち上げる練習(SLR),膝に力を入れて伸ばす練習などがあります。筋力がないと力が入らず歩けないので、手術翌日からでも練習を始めます。
2)関節を動かす練習
CPMという機械を使い、ベッド上で寝ているときから動かす練習を始めます。リハビリ室へ行くようになると、この機械での練習と理学療法士による練習との両方を行います。
3)生活動作練習
歩行が上手になってくるにつれて階段、床からの立ち上がりなどの自宅で生活するための練習が加わります。
大まかな日程としては、手術後チューブが抜けた1~2日目からCPM、車椅子乗車、2~3日目からリハビリ室へ行って歩行練習、1週くらいで片松葉杖での歩行、2週くらいで杖なしの歩行、となり、手術後約2から3週間で退院となる予定です(学校、仕事などに応じて変化あり)。リハビリは2から3ヶ月を要します。
退院後の注意
再建靭帯がある程度の強度になるには数ヶ月かかります。強くなる前に負担をかけすぎると再断裂する場合があります。また、再建靭帯が強くなっても、大腿四頭筋の筋力が弱いままではスポーツに復帰できません。再建靭帯の強度、筋力回復の程度、などをみながら生活指導をしていく予定です。