第10回 口腔ケア
口腔ケア
2017.3.28
怠ると誤嚥性肺炎に 定期的に歯科の受診を
【相談者】
Hさん 72歳男性。先日、誤嚥(ごえん)性肺炎で入院しました。予防のため「口腔(こうくう)ケアをしっかりするように」と指導されました。自分は総入れ歯なので歯が無いのですが、それでも口腔ケアをしないといけないのでしょうか。
口腔は飲食物を取り込む入り口であるとともに、形を変えて空気の流れを変化させることで言葉を作り出す場所でもあります。飲食物と空気の通り道は咽頭(いんとう)で交差していますが、飲食物は食道に入って胃に送られ、空気は気道に入って肺へ送られるように複数の筋肉の働きで交通整理されています(図)。
ところが、加齢に伴う筋力低下などで交通整理がうまくできなくなると、飲食物や唾液が気道に入ってしまい(誤嚥)、それが原因となって誤嚥性肺炎が引き起こされてしまいます。
■ケア不足だと?
誤嚥性肺炎の予防に重要なのが、口腔ケア(表1)です。
口腔は、食物をかんで唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすい形に変える重要な場所である一方、常に温かくて湿っているので口腔ケアを怠り不潔にしていると、肺炎の原因となる病原菌を培養する場所となってしまいます。嚥下機能が低下している場合、口腔ケアが不十分だと、口腔内で増殖した病原菌の混じった唾液を誤嚥してしまい、誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。
そもそも口腔内の細菌がたまりやすい場所はどこでしょうか。歯と歯の隙間、歯のかみ合わせの溝、歯と歯肉の境、入れ歯の金具とそれが掛かる歯のように、狭くて空気の触れにくい場所で細菌は増えます(表2)。歯ブラシを用いて口腔ケアを行う場合には、そのような狭くなっている部分に歯ブラシの毛先を当てることが重要です。
入れ歯は人工物なので、表面の小さな凸凹が細菌のすみかになり、食後も口腔内に入れっぱなしにしていると細菌が増えてヌルヌルになってしまいます。そのため、Hさんのように総入れ歯を使用中の人でも、毎食後に入れ歯を洗浄してうがいをする必要があります。
■汚れを落とすには?
繊維質の食物をよくかむことで、歯や口腔粘膜の表面が食物で磨かれて汚れが落ちます。よくかまずに飲み込んでしまう場合や、かみ合う相手の無い歯は、歯やその周りの粘膜に汚れがたまり、細菌のすみかとなります。また、唾液には口腔内の汚れを洗い流す役割があるのですが、あまり口腔を動かさないと唾液の分泌が少なくなり、歯だけでなく舌や頬などの粘膜表面でも細菌が増えます。
口腔を十分に動かさないでいると唾液の分泌が少なくなるだけでなく、食事をするために必要な筋肉の活動が少なくなり、嚥下機能が悪くなる可能性が高くなります。実は、口腔ケアとは単に歯磨きをするだけではなく、口唇や舌、頬などの口腔の筋肉の動きを活発にするトレーニングや唾液腺マッサージも含みます。
■入れ歯の場合は?
たとえ総入れ歯を使用中でも口腔ケアをすることにより、唾液で潤い、上手に飲み込める口腔の状態を維持することができます。そして、口腔機能を維持することで誤嚥性肺炎を繰り返すリスクを減らすことができます。
自分の口腔で細菌がたまりやすい場所を知るために、歯科医院で確認してもらうことをお勧めします。歯科医院では自分の口腔に適したケア方法を指導してもらえますので、定期的な受診が望ましいです。
【相談者】
Hさん 72歳男性。先日、誤嚥(ごえん)性肺炎で入院しました。予防のため「口腔(こうくう)ケアをしっかりするように」と指導されました。自分は総入れ歯なので歯が無いのですが、それでも口腔ケアをしないといけないのでしょうか。
口腔は飲食物を取り込む入り口であるとともに、形を変えて空気の流れを変化させることで言葉を作り出す場所でもあります。飲食物と空気の通り道は咽頭(いんとう)で交差していますが、飲食物は食道に入って胃に送られ、空気は気道に入って肺へ送られるように複数の筋肉の働きで交通整理されています(図)。
ところが、加齢に伴う筋力低下などで交通整理がうまくできなくなると、飲食物や唾液が気道に入ってしまい(誤嚥)、それが原因となって誤嚥性肺炎が引き起こされてしまいます。
■ケア不足だと?
誤嚥性肺炎の予防に重要なのが、口腔ケア(表1)です。
口腔は、食物をかんで唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすい形に変える重要な場所である一方、常に温かくて湿っているので口腔ケアを怠り不潔にしていると、肺炎の原因となる病原菌を培養する場所となってしまいます。嚥下機能が低下している場合、口腔ケアが不十分だと、口腔内で増殖した病原菌の混じった唾液を誤嚥してしまい、誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。
そもそも口腔内の細菌がたまりやすい場所はどこでしょうか。歯と歯の隙間、歯のかみ合わせの溝、歯と歯肉の境、入れ歯の金具とそれが掛かる歯のように、狭くて空気の触れにくい場所で細菌は増えます(表2)。歯ブラシを用いて口腔ケアを行う場合には、そのような狭くなっている部分に歯ブラシの毛先を当てることが重要です。
入れ歯は人工物なので、表面の小さな凸凹が細菌のすみかになり、食後も口腔内に入れっぱなしにしていると細菌が増えてヌルヌルになってしまいます。そのため、Hさんのように総入れ歯を使用中の人でも、毎食後に入れ歯を洗浄してうがいをする必要があります。
■汚れを落とすには?
繊維質の食物をよくかむことで、歯や口腔粘膜の表面が食物で磨かれて汚れが落ちます。よくかまずに飲み込んでしまう場合や、かみ合う相手の無い歯は、歯やその周りの粘膜に汚れがたまり、細菌のすみかとなります。また、唾液には口腔内の汚れを洗い流す役割があるのですが、あまり口腔を動かさないと唾液の分泌が少なくなり、歯だけでなく舌や頬などの粘膜表面でも細菌が増えます。
口腔を十分に動かさないでいると唾液の分泌が少なくなるだけでなく、食事をするために必要な筋肉の活動が少なくなり、嚥下機能が悪くなる可能性が高くなります。実は、口腔ケアとは単に歯磨きをするだけではなく、口唇や舌、頬などの口腔の筋肉の動きを活発にするトレーニングや唾液腺マッサージも含みます。
■入れ歯の場合は?
たとえ総入れ歯を使用中でも口腔ケアをすることにより、唾液で潤い、上手に飲み込める口腔の状態を維持することができます。そして、口腔機能を維持することで誤嚥性肺炎を繰り返すリスクを減らすことができます。
自分の口腔で細菌がたまりやすい場所を知るために、歯科医院で確認してもらうことをお勧めします。歯科医院では自分の口腔に適したケア方法を指導してもらえますので、定期的な受診が望ましいです。