ほっとホスピタル 病と健康
ほっとホスピタル病と健康TOP
第37回 末梢動脈疾患
第36回 脳卒中予防のための血圧管理
第35回 尿路結石症
第34回 骨粗しょう症
第34回 大腿骨近位部骨折
第33回 スキン‐テア(皮膚裂傷)
第33回 低温熱傷
第32回 そけいヘルニア
第31回 めまいを起こす病気
第30回 お薬との上手なつきあい方
第29回 帯状疱疹
第29回 足白癬・爪白癬
第28回 夏風邪
第28回 高山病
第28回 熱中症
第27回 足の病気
第26回 心不全
第25回 シェーグレン症候群
第24回 認知症
第23回 更年期障害
第22回 くも膜下出血
第21回 ウイルス性肝炎
第20回 心筋梗塞
第20回 狭心症
第19回 糖尿病の注意点
第19回 食後高血糖
第18回 肌のトラブル
第17回 前立腺の病気
第16回 脳梗塞
第15回 睡眠時無呼吸症候群
第14回 ピロリ菌
第13回 腸炎
第12回 スポーツ時の脳振とう
第12回 高齢者の慢性硬膜下血腫
第12回 子どもの頭部外傷
第11回 高血圧
第10回 口腔ケア
第9回 不整脈
第8回 消化器内視鏡検査でわかること
第7回 男性不妊症
第6回 肺炎
第6回 感染性胃腸炎
第6回 インフルエンザ
第5回 糖尿病
第4回 乳がん
第3回 野球肘
第2回 脳卒中にならないために
第1回 失神

第20回 狭心症

狭心症と心筋梗塞 ~狭心症~

2017.12.12
冠動脈の血流悪化し発症 薬で心臓の負担軽減

【相談者】
 Kさん 58歳男性。最近、坂道を登ったり、急いで歩いたりしたときに、胸が痛いことがあります。心臓病でははないかと心配です。受診したほうがよいでしょうか?

 中高年の登山ブームのためか、登山中の死因として、外傷、寒冷障害と並び心臓病が増えています。受診をためらっていたKさんも、趣味の登山中に強い胸部圧迫感が生じました。やっとの思いで下山して病院で受診し「狭心症」と診断されました。今回は狭心症について解説します。

■心臓の働きは?
 心臓は全身に血液を送り出すポンプで、1日で約10万回も動いています。この絶え間ない動きを支える酸素や栄養を運ぶ血液は、心臓にかぶさるような「冠動脈」と呼ばれる血管を通して運ばれてきます。

 冠動脈の血流が悪くなり、心臓が重い貧血状態になることで、胸が苦しくなるのが狭心症です。血流が途絶え、心臓の一部が死んでしまった状態は心筋梗塞と言います。

 坂道を登ったり、急いで歩いたりすると、安静時の5~7倍の酸素が全身に必要で、心臓はより多くの仕事をする必要があります。結果、心臓にもより多くの酸素が必要となり、冠動脈を通し大量の血液が流れることになります。

 動脈硬化などで血流が妨げられると、狭心症や心筋梗塞、さらには突然死などの重大な心臓病を引き起こしますので、注意が必要です。

■症状と検査は?
 狭心症は、胸が「締め付けられる」「重苦しい」「圧迫される」などの症状が現れます。これらは前胸部、みぞおちなどの特定できない範囲に生じ、首や肩、喉に感じることもあります。症状が続く時間は5分以内がほとんどです。体を動かしたときに生じ、休めたら治るのが典型的ですが、安静時に生じるケースや無症状の場合もあります。

(上) 狭心症の症状

 検査には、心電図検査を行います。普通の心電図でも、最近の強い発作の名残が出ることがあります。運動や薬を用いて、心臓に負担をかける負荷心電図で病気に特徴的な変化を確認できます。

(上) 狭心症の検査で分かること

 体を動かしていない状況で症状が現れる場合には、1日の心臓の動きを記録するホルター心電図検査を行います。より詳しい検査として、心エコーやRI心筋シンチグラフィー検査があります。最終的には、CTコンピューター断層撮影法やカテーテル検査で冠動脈の詰まり具合を診断できます。

■治療は?
 ニトログリセリンやカルシウム拮抗薬は冠動脈を広げ、心臓への血流を増やすと同時に、心臓の負担を減らし狭心症を抑制します。交感神経ベータ遮断薬は心臓の負担を減らし、不整脈も抑えます。抗血小板薬は心筋梗塞など病気の進行を防ぎます。

 手術では動脈硬化で狭くなった冠動脈を広げるために、カテーテルを挿入し、バルーン(風船)で広げ、ステント(コイル状の金属)を留め置くPCI(冠動脈カテーテルインターベンション)が一般的です。外科手術より身体的負担が軽い半面、再治療が必要な場合があります。

 さらに症状が進んでいる場合などには、胸や足の血管を使って流れの悪い血管に別の流路(バイパス)を作り、心臓への血液の流れを確保する冠動脈バイパス術を行うことがあります。全身麻酔で胸を大きく切り開ける手術のため、主に重症の方が対象となります。いったん別の流路ができると、長期にわたって血流の改善が見込めます。


先頭へ