第29回 帯状疱疹
皮膚の病気 ~帯状疱疹~
2018.8.28
免疫低下で発症 抗ウイルス剤を投与
【相談者】
Yさん 69歳女性。 知人が帯状疱疹(ほうしん)と診断されました。症状や治療方法を教えてください。回復後に再発することはあるのでしょうか?
日本人の3人に1人が一生涯のうちに一度は帯状疱疹に罹患(りかん)すると考えられています。さらに患者の20人に1人は再発します。
■症状は?
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で起こります。空気中のウイルスを吸入して感染し、2週間ほどの潜伏期間を経て最初は水ぼうそう(水痘)として発症します。
水ぼうそうが治った後もウイルスは神経節に一生涯潜伏します。免疫が低下した際にウイルスを抑える力が弱くなると、ウイルスの再活性化が起こります。再活性化したウイルスは知覚神経を通って皮膚に達し、水疱や紅斑を形成します。神経節の神経支配領域にだけ病変が出現するため、皮疹は片側にだけ出現し帯状になります(図)。
好発部位は前頭・前額部と胸背部です。帯状疱疹は、ウイルスにより神経に炎症が起こるため通常痛みが生じますが、痛みの強さは人により千差万別です。夜眠れないほど痛くなる人もいれば、全く痛みのない人もいます。皮疹と同じ側の離れた部位に痛みだけが出現することもあります。その場合、神経の中だけでウイルスが増殖していると考えられます。高齢者で痛みが強いと、帯状疱疹後神経痛が残り、一生涯痛みが続くことがあります。
■診断は?
帯状疱疹は、皮疹より痛みが先行することが多く、数日後または1~2週間後に遅れて皮疹が出現することがあります(写真)。
写真:帯状疱疹は帯状に皮疹が広がり、痛みが伴う(済生会富山病院提供)
皮疹が出てこないと帯状疱疹と分からないため、CT検査などをしても異常が見つからず原因不明となります。痛みに対して湿布薬を貼り、様子を見ているうちに皮疹が出現した場合、湿布かぶれと勘違いする人もよくいます。
通常は水疱や紅斑が群がってでき、神経節の神経支配領域に帯状に出現します。特徴的な皮疹が出れば見ただけで診断がつきます。皮疹が少ない場合は帯状に見えず診断に困ることもあります。水痘ウイルス抗原簡易検出キット(製品名デルマクイック)を利用すれば10分以内にはウイルスの有無が判明します。このキットは水疱が少ない水痘初期の診断や、類縁疾患である単純ヘルペスとの鑑別にも有用です。
帯状疱疹の治療には、ウイルスの増殖を阻害して効果を発揮する抗ウイルス剤を投与します。抗ウイルス剤には外用剤や内服薬、点滴薬があり、軽中等度のものには内服薬が適応されます。重度のものや、高齢者で痛みが強い場合は、帯状疱疹後神経痛が残る危険があるため点滴薬で治療します。増殖したウイルスが多いと、薬剤投与後2~3日目くらいから効果が現れることもあります。
帯状疱疹では痛みのコントロールも必要になります。鎮痛剤を内服しますが、それだけでは痛みが抑えられないこともあり、神経の炎症を抑えるステロイド剤や、末梢から中枢への痛みの伝達を抑制する抗うつ剤、さらに強力な鎮痛剤を内服します。
■予防は?
加齢に伴い細胞性免疫が低下することで帯状疱疹が発症すると考えられます。水痘ワクチンを高齢者に接種すると、水痘ウイルスに対する細胞性免疫が増強することが分かっています。ワクチンにより帯状疱疹の発症は半分に抑えられ、帯状疱疹後神経痛は3分の1に減ると考えられています。ワクチンの効果は10年近く持続します。50歳以上の人は帯状疱疹の予防のために水痘ワクチンの接種が推奨されています。