第12回 スポーツ時の脳振とう
頭部外傷 ~スポーツ時の脳振とう~
2017.5.16
最低24時間は安静に 繰り返すと生活に支障も
【相談者】
Mさん 17歳男性。高校3年で部活で柔道をしています。昨日、試合中に投げられ、後頭部を強打しました。頭にはたんこぶもなく、意識も大丈夫でしたが、ふらついてうまく歩けませんでした。すぐに顧問の先生と病院で受診したところ、頭のCT(コンピューター断層撮影)では異常なく、安静にして様子を見るようにいわれました。今日、症状はなくなりましたが、試合に出られますか?
スポーツは心身を健全に保つために役立ちますが、一方で、スポーツ現場での頭部外傷は少なくありません。多くは軽症で心配いりませんが、脳振とうを起こした場合は注意が必要です。脳振とうの直後に競技や練習に復帰して、死亡したり重い後遺症を残したりする事例が報告されているからです。
2012年度から中学生の武道必修化がスタートしたこともあって、近年、文部科学省をはじめ関連学会や各スポーツ団体などで、競技者をスポーツ頭部外傷から守るための取り組みが始まっています。今回は、一般的には軽症と思われている脳振とうについて取り上げます。
■症状は?
スポーツで起きる脳の損傷には、脳振とう、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、脳挫傷などがあります。特に多いのが脳振とうで、次いで多いのが、重篤になりやすい急性硬膜下血腫です。
脳振とうとは「頭部に対する直接的あるいは間接的な外力によって脳機能が障害された状態」と定義されています。症状としては、意識消失や健忘症状だけでなく、頭痛や気分不良などさまざまなものがあり、意識を失わないこともあります。
脳振とうの症状は、通常短時間で消失することが多いのですが、まれに数日~数週間以上持続する場合もあり、あなどれません。また、脳振とうを繰り返すと、症状が長く続き、将来にわたって生活に支障をきたすことがあります。ですから、脳振とうの繰り返しは避けなければなりません。
■現場での対応は?
指導者やスタッフはまず、競技者が頭を打って倒れたら、すぐにそばにいって受傷後の状況を見てください。最初に意識があるか、呼吸をしているか、心臓が動いているかなど、生死に関わる兆候を確認して、その後は、脳振とうが疑われる症状(表1)がないかどうかを見てください。
もし、症状が一つでもあれば、ただちに競技や練習への参加を中止にして、医師の診察を受けましょう。もちろん、意識が回復しなかったり、生死に関わる兆候が見られたりする重篤な状態であれば、すぐに救急車で病院に搬送してください。
■競技復帰は?
脳振とうを起こした後の競技者は、身体反応能力が低下し、けがをしやすいといわれています。また、脳振とう症状があるうちは、脳のダメージが完全に回復していないので、軽い打撲で重症の脳損傷が起こる事例が報告されています。ですから、脳振とう後は、最低24時間は安静にし、1人きりにしないで誰かが状態を観察してください。
また、脳振とう後は段階を踏んで慎重に競技や練習に復帰するようにしましょう(表2)。次の段階へ進む判断に迷うときは、スポーツドクターや脳神経外科医に相談することもお勧めです。
スポーツに関わる競技者、指導者やその家族の皆さんには頭部外傷、特に脳振とうについてご理解いただき、競技者の生命や将来を大切にするようにお願いしたいと思います。
【相談者】
Mさん 17歳男性。高校3年で部活で柔道をしています。昨日、試合中に投げられ、後頭部を強打しました。頭にはたんこぶもなく、意識も大丈夫でしたが、ふらついてうまく歩けませんでした。すぐに顧問の先生と病院で受診したところ、頭のCT(コンピューター断層撮影)では異常なく、安静にして様子を見るようにいわれました。今日、症状はなくなりましたが、試合に出られますか?
スポーツは心身を健全に保つために役立ちますが、一方で、スポーツ現場での頭部外傷は少なくありません。多くは軽症で心配いりませんが、脳振とうを起こした場合は注意が必要です。脳振とうの直後に競技や練習に復帰して、死亡したり重い後遺症を残したりする事例が報告されているからです。
2012年度から中学生の武道必修化がスタートしたこともあって、近年、文部科学省をはじめ関連学会や各スポーツ団体などで、競技者をスポーツ頭部外傷から守るための取り組みが始まっています。今回は、一般的には軽症と思われている脳振とうについて取り上げます。
■症状は?
スポーツで起きる脳の損傷には、脳振とう、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、脳挫傷などがあります。特に多いのが脳振とうで、次いで多いのが、重篤になりやすい急性硬膜下血腫です。
脳振とうとは「頭部に対する直接的あるいは間接的な外力によって脳機能が障害された状態」と定義されています。症状としては、意識消失や健忘症状だけでなく、頭痛や気分不良などさまざまなものがあり、意識を失わないこともあります。
脳振とうの症状は、通常短時間で消失することが多いのですが、まれに数日~数週間以上持続する場合もあり、あなどれません。また、脳振とうを繰り返すと、症状が長く続き、将来にわたって生活に支障をきたすことがあります。ですから、脳振とうの繰り返しは避けなければなりません。
■現場での対応は?
指導者やスタッフはまず、競技者が頭を打って倒れたら、すぐにそばにいって受傷後の状況を見てください。最初に意識があるか、呼吸をしているか、心臓が動いているかなど、生死に関わる兆候を確認して、その後は、脳振とうが疑われる症状(表1)がないかどうかを見てください。
もし、症状が一つでもあれば、ただちに競技や練習への参加を中止にして、医師の診察を受けましょう。もちろん、意識が回復しなかったり、生死に関わる兆候が見られたりする重篤な状態であれば、すぐに救急車で病院に搬送してください。
■競技復帰は?
脳振とうを起こした後の競技者は、身体反応能力が低下し、けがをしやすいといわれています。また、脳振とう症状があるうちは、脳のダメージが完全に回復していないので、軽い打撲で重症の脳損傷が起こる事例が報告されています。ですから、脳振とう後は、最低24時間は安静にし、1人きりにしないで誰かが状態を観察してください。
また、脳振とう後は段階を踏んで慎重に競技や練習に復帰するようにしましょう(表2)。次の段階へ進む判断に迷うときは、スポーツドクターや脳神経外科医に相談することもお勧めです。
スポーツに関わる競技者、指導者やその家族の皆さんには頭部外傷、特に脳振とうについてご理解いただき、競技者の生命や将来を大切にするようにお願いしたいと思います。