第28回 高山病
夏に起こりやすい病気 ~高山病~
2018.7.24
安静にして酸素投与 体調整えゆっくり行動
【相談者】
Yさん 42歳男性。「今年は高山植物の当たり年」と聞いて立山登山を思い立ちました。前日遅くまで仕事をして、翌朝の始発電車、ケーブルカー、高原バスを乗り継ぎ、室堂から登山を開始しました。しばらくして頭痛を感じるようになり、一の越に着いた頃には吐き気やめまいも認めるようになったため、登山を諦め下山し、病院を受診しました。
【相談者】
標高が高くなるにつれ、大気圧は低くなり空気が薄くなります。平地に比べると3千メートル程度(雄山山頂)では3分の2、エベレスト山頂では3分の1の薄さです。そのため、室堂平のような2500メートル以上の高地(空気は平地の4分の3)に滞在することで、さまざまな障害が発生することがあり、状況や症状からYさんは、急性高山症が疑われます。
平地から2500メートルに登った人の4人に1人、3500メートル以上ではほぼ全員に症状が現れ、約10%が重症化すると言われています。バスやケーブルカー、ロープウェーで急速に登ると起きやすいとされています
■症状は?
高山病の症状や重症度から以下のように分類されています。
急性高山病: 新しい高度に到達した後に頭痛が出現し、さらにもう一つの症状(食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)などの消化器症状、疲労・脱力、めまい・ふらつき、睡眠障害)が加わったものが急性高山病です(表1)。この急性高山病は、標高を変えずその場にとどまってもほとんどの場合1、2日で治りますが、以下のように重症化する例もあります。
高地性肺水腫: 到達後1-3日で、急性高山病に引き続き重症の呼吸障害が急に出現します。
高地性脳浮腫: 到達後数日で、急性高山病に引き続き、強い頭痛、運動障害、精神障害、意識障害などが急に出現します。
■応急処置は?
急性高山病の場合、安静にして可能であれば酸素投与を行います。脱水症を合併していることもあり、水分補給も重要です。改善しなければ下山(300メートル以上標高を下げる)します。肺水腫・脳浮腫は緊急の対応が必要ですので直ちに医療機関の受診が必要です(表2)。
Yさんは、急性高山病と診断されました。前日夜遅くまで仕事をしていたため、疲れを取ろうと高原バス内では寝ていたというYさんですが、寝たのがよくなかったかもしれません。なぜなら、睡眠中は呼吸も浅くなり、ますます高山病発症リスクが高まるからです。バスが標高を上げ始めたら、起きていることが望ましいです。
■予防は?
登山前に体調を整えておくことが重要です。バスやケーブルカーなどで急速に高度を上げる場合、乗車中は大きな呼吸を心掛けましょう。寝てしまうと呼吸が浅くなり酸素を十分に取り込めないため高山病が起こりやすくなります。
高所に到着したら、すぐ寝ないようにしましょう。辺りを散策して体を慣らすことも大切です。足慣らしに標高を変えずにまず散策するのもよい方法です。登山開始直後はゆっくり行動して高所に体を慣らしてください。深呼吸を心掛け、必要以上に体を締め付けないようにしましょう。脱水の予防、エネルギー補給に十分な水分補給、糖分補給をしましょう(表3)。
海外旅行など飛行機で高地へ行く場合にも高山病の危険がありますので注意が必要です。