第16回 脳梗塞
脳梗塞(上)~一過性脳虚血発作~
2017.8.15
警告サイン見逃さず 発症 48時間以内多い
【相談者】
Sさん 63歳男性。3日前、右手の力が抜けて持っていたペットボトルを落とし、立ち上がろうとしても右足に力が入りませんでした。じっと座っていたら、1分ほどで元通りに戻りました。昨夜も同じようなことがあり2~3分間で元に戻ったのですが、心配になって受診しました。
これは典型的な一過性脳虚血発作です。脳梗塞はよく知られていても、一過性脳虚血発作を知っている人はあまり多くありません。元に戻ったのだから軽症だとか、このまま様子を見ていればよいなどとは、決して思わないでください。
■症状は?
一過性脳虚血発作は脳梗塞の警告サインです。24時間以内に症状が戻るものをこのように呼びますが、多くの場合は数分間で症状が消えます。症状は、相談者のような手足の運動まひが約3分の2で、次いでろれつが回りにくくなることなどが現れます。
この警告発作が起こると、3カ月以内に20%近くの人が本物の脳梗塞を起こすことが知られており、特に、発作から48時間以内に最も多く脳梗塞を発症します。症状が戻ったからこそ、すぐに脳卒中の専門病院を受診してください。
■種類は?
さて、脳梗塞を大きく分けると、三つのタイプに分けることができます。
一つ目は、ラクナ梗塞です。高血圧症によって直径が1ミリよりも細い血管がダメージを受けて、詰まってしまうものです。かつて塩分を大量に取っていた時代のわが国では、最も多いタイプでした。
二つ目は、アテローム血栓性脳梗塞です。生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)や喫煙、過度の飲酒などによって、頸(けい)動脈を代表とする太い血管の壁に酸化した悪玉コレステロールがたまります。そこに血栓(血液の塊)が付いて、それがはがれ飛んで、より先の血管に詰まるものです。著しく狭くなっている場合、急に血圧が下がると脳に十分な血流が回らなくなって脳梗塞を起こす場合もあります。
三つ目は、心原性脳塞栓症です。心臓の中にできた比較的大きな血栓が、脳の動脈に流れ飛んで詰まってしまうものです。代表的な原因が、心房細動という不整脈です。心房細動の有病率は60歳を超えると急増し始め、それ以降は年齢とともに増加します。従って、社会の高齢化が進むわが国では今後ますます増加するものと思われます。
これら三つのタイプの発症頻度は現在、ほとんど同じですが、今後は後者二つの増加が見込まれます。
警告サインとしての一過性脳虚血発作は、この三つのいずれのタイプでも起こり得ます。欧米では、アテローム血栓性脳梗塞に関連したものが多く、わが国ではラクナ梗塞に関連したものが欧米よりも多いのが特徴です。心原性脳塞栓症は、警告サインなしで重症の脳梗塞を発症することが多いことで知られています。
■治療は?
一過性脳虚血発作に対しては、すぐに検査を行って、そのタイプに応じて血栓予防の薬を開始し、合わせて生活習慣病の管理を行います。手術やカテーテルを用いた治療が必要な場合もあります。一過性脳虚血発作の後に脳梗塞を起こす危険度は、年齢(60歳以上か否か)、高血圧症の有無、症状(特に手足の運動まひ)、どれくらいの時間症状があったか、糖尿病の有無-などによって変わってきます。
大切なことは、まず「これって、一過性脳虚血発作かな? すぐに脳卒中の専門病院へ行かなきゃ」と気付くかどうかにかかっています。一人でも多くの人が、一過性脳虚血発作の段階で、脳梗塞を予防できることを願っています。
【相談者】
Sさん 63歳男性。3日前、右手の力が抜けて持っていたペットボトルを落とし、立ち上がろうとしても右足に力が入りませんでした。じっと座っていたら、1分ほどで元通りに戻りました。昨夜も同じようなことがあり2~3分間で元に戻ったのですが、心配になって受診しました。
これは典型的な一過性脳虚血発作です。脳梗塞はよく知られていても、一過性脳虚血発作を知っている人はあまり多くありません。元に戻ったのだから軽症だとか、このまま様子を見ていればよいなどとは、決して思わないでください。
■症状は?
一過性脳虚血発作は脳梗塞の警告サインです。24時間以内に症状が戻るものをこのように呼びますが、多くの場合は数分間で症状が消えます。症状は、相談者のような手足の運動まひが約3分の2で、次いでろれつが回りにくくなることなどが現れます。
この警告発作が起こると、3カ月以内に20%近くの人が本物の脳梗塞を起こすことが知られており、特に、発作から48時間以内に最も多く脳梗塞を発症します。症状が戻ったからこそ、すぐに脳卒中の専門病院を受診してください。
■種類は?
さて、脳梗塞を大きく分けると、三つのタイプに分けることができます。
一つ目は、ラクナ梗塞です。高血圧症によって直径が1ミリよりも細い血管がダメージを受けて、詰まってしまうものです。かつて塩分を大量に取っていた時代のわが国では、最も多いタイプでした。
二つ目は、アテローム血栓性脳梗塞です。生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)や喫煙、過度の飲酒などによって、頸(けい)動脈を代表とする太い血管の壁に酸化した悪玉コレステロールがたまります。そこに血栓(血液の塊)が付いて、それがはがれ飛んで、より先の血管に詰まるものです。著しく狭くなっている場合、急に血圧が下がると脳に十分な血流が回らなくなって脳梗塞を起こす場合もあります。
三つ目は、心原性脳塞栓症です。心臓の中にできた比較的大きな血栓が、脳の動脈に流れ飛んで詰まってしまうものです。代表的な原因が、心房細動という不整脈です。心房細動の有病率は60歳を超えると急増し始め、それ以降は年齢とともに増加します。従って、社会の高齢化が進むわが国では今後ますます増加するものと思われます。
これら三つのタイプの発症頻度は現在、ほとんど同じですが、今後は後者二つの増加が見込まれます。
警告サインとしての一過性脳虚血発作は、この三つのいずれのタイプでも起こり得ます。欧米では、アテローム血栓性脳梗塞に関連したものが多く、わが国ではラクナ梗塞に関連したものが欧米よりも多いのが特徴です。心原性脳塞栓症は、警告サインなしで重症の脳梗塞を発症することが多いことで知られています。
■治療は?
一過性脳虚血発作に対しては、すぐに検査を行って、そのタイプに応じて血栓予防の薬を開始し、合わせて生活習慣病の管理を行います。手術やカテーテルを用いた治療が必要な場合もあります。一過性脳虚血発作の後に脳梗塞を起こす危険度は、年齢(60歳以上か否か)、高血圧症の有無、症状(特に手足の運動まひ)、どれくらいの時間症状があったか、糖尿病の有無-などによって変わってきます。
大切なことは、まず「これって、一過性脳虚血発作かな? すぐに脳卒中の専門病院へ行かなきゃ」と気付くかどうかにかかっています。一人でも多くの人が、一過性脳虚血発作の段階で、脳梗塞を予防できることを願っています。
脳梗塞(中)~治療~
2017.8.22
3時間半以内に病院へ 点滴や血栓回収で改善
【相談者】
Kさん 72歳女性。万が一、脳梗塞の症状が出たら、車で30分の距離にいる息子に病院へ連れて行ってくれるように頼んであります。症状が出てから何時間までに病院へ行けばよいのでしょうか。
「Time is money(時は金なり)」と言うことわざがあります。脳梗塞に関しても同じように「Time is brain(brain=脳)」という言葉が使われます。少しでも時間が遅れると、治療を受ければ回復する可能性があった部分にも脳梗塞が進行して、手足の運動まひや言葉の障害などの後遺症がより重く残ります。重症の場合は、生命にかかわる可能性もあります。
従って息子さんが車で到着するのを待つのではなく、すぐに救急車を呼んで、少しでも早く脳卒中の専門病院へ来院してください。
■急ぐ理由は?
脳梗塞の治療には、脳の血管に詰まっている血栓(血液の塊)を溶かす働きの強い「組織プラスミノーゲン・アクチベーター(t-PA)」という薬を点滴で用いることがあります。この薬は症状が出てから4・5時間以内にしか使うことができません。よく効く一方で、まれに脳などに出血したりする場合があるため、使用にあたって厳しい基準を満たす必要があります。
実際に、急性期の脳梗塞患者さんにt-PA治療が行われるのは、全脳梗塞患者さんの15~20人に1人程度です。脳のCT(コンピューター断層撮影)検査またはMRI(磁気共鳴画像装置)検査、血液検査などによって使用基準に適しているかを調べるためには、脳卒中の専門病院でも1時間近くかかります。ですから4・5時間以内に点滴を開始するには、どんなに遅くても発症3・5時間以内に来院する必要があります。
これで、一刻も早く救急車で来院する必要がある理由をご理解いただけたのではないでしょうか。脳卒中の専門病院の多くは、多職種による脳卒中チームを作って、病院に到着してから使用までの時間をいかに短縮するかという「時短」の取り組みを行っています。
■効果は?
さて、t-PAの効果はどの程度なのでしょうか。t-PAを使用して、全く元通りまたは軽い症状が残っても元の社会生活・家庭生活に戻れたという人は30~40%です。決して魔法の薬ではありません。
t-PAを使用した患者さんの中では、同じ4・5時間以内でも少しでも早く使用した患者さんの方が症状の改善が良いことが知られています。まさに、「Time is brain」ですね。
■別の方法は?
t-PAで効果がなかった場合に、もう一つ方法があります。この治療にも使用にあたって厳しい基準があるのですが、カテーテルという細いチューブを足の付け根の動脈から進めて、脳の血管に詰まった血栓を吸引したり、ステント式(先端に金属のメッシュの形状がついたもの)器具で血栓を回収したりする方法です。この方法によって、t-PAが効きにくい脳の太い動脈に詰まった血栓を回収して、血液の流れを再開させることができる場合があります。
写真(1):ステント式の器具で回収された血栓
写真(2):血栓回収前(左)と回収後の血管画像。血栓がなくなると血液が末端まで流れているのが分かる。
どちらかの手足が動きにくい、言葉が出にくい(またはろれつが回りにくい)などの症状が出た時には、まさに時間との闘いであることを十分にご理解いただけたことと思います。迷わず救急車を呼んでくださいね。
【相談者】
Kさん 72歳女性。万が一、脳梗塞の症状が出たら、車で30分の距離にいる息子に病院へ連れて行ってくれるように頼んであります。症状が出てから何時間までに病院へ行けばよいのでしょうか。
「Time is money(時は金なり)」と言うことわざがあります。脳梗塞に関しても同じように「Time is brain(brain=脳)」という言葉が使われます。少しでも時間が遅れると、治療を受ければ回復する可能性があった部分にも脳梗塞が進行して、手足の運動まひや言葉の障害などの後遺症がより重く残ります。重症の場合は、生命にかかわる可能性もあります。
従って息子さんが車で到着するのを待つのではなく、すぐに救急車を呼んで、少しでも早く脳卒中の専門病院へ来院してください。
■急ぐ理由は?
脳梗塞の治療には、脳の血管に詰まっている血栓(血液の塊)を溶かす働きの強い「組織プラスミノーゲン・アクチベーター(t-PA)」という薬を点滴で用いることがあります。この薬は症状が出てから4・5時間以内にしか使うことができません。よく効く一方で、まれに脳などに出血したりする場合があるため、使用にあたって厳しい基準を満たす必要があります。
実際に、急性期の脳梗塞患者さんにt-PA治療が行われるのは、全脳梗塞患者さんの15~20人に1人程度です。脳のCT(コンピューター断層撮影)検査またはMRI(磁気共鳴画像装置)検査、血液検査などによって使用基準に適しているかを調べるためには、脳卒中の専門病院でも1時間近くかかります。ですから4・5時間以内に点滴を開始するには、どんなに遅くても発症3・5時間以内に来院する必要があります。
これで、一刻も早く救急車で来院する必要がある理由をご理解いただけたのではないでしょうか。脳卒中の専門病院の多くは、多職種による脳卒中チームを作って、病院に到着してから使用までの時間をいかに短縮するかという「時短」の取り組みを行っています。
■効果は?
さて、t-PAの効果はどの程度なのでしょうか。t-PAを使用して、全く元通りまたは軽い症状が残っても元の社会生活・家庭生活に戻れたという人は30~40%です。決して魔法の薬ではありません。
t-PAを使用した患者さんの中では、同じ4・5時間以内でも少しでも早く使用した患者さんの方が症状の改善が良いことが知られています。まさに、「Time is brain」ですね。
■別の方法は?
t-PAで効果がなかった場合に、もう一つ方法があります。この治療にも使用にあたって厳しい基準があるのですが、カテーテルという細いチューブを足の付け根の動脈から進めて、脳の血管に詰まった血栓を吸引したり、ステント式(先端に金属のメッシュの形状がついたもの)器具で血栓を回収したりする方法です。この方法によって、t-PAが効きにくい脳の太い動脈に詰まった血栓を回収して、血液の流れを再開させることができる場合があります。
写真(1):ステント式の器具で回収された血栓
写真(2):血栓回収前(左)と回収後の血管画像。血栓がなくなると血液が末端まで流れているのが分かる。
どちらかの手足が動きにくい、言葉が出にくい(またはろれつが回りにくい)などの症状が出た時には、まさに時間との闘いであることを十分にご理解いただけたことと思います。迷わず救急車を呼んでくださいね。
脳梗塞(下)~予防~
2017.8.29
脱水状態に要注意 心臓や腎臓チェック
【相談者】
Mさん 74歳男性。脳梗塞にならないためには、水分をたくさん飲んだ方が良いと聞きましたが、1日に何リットルくらい飲めばよいのでしょうか? 夜寝る前にも飲んだ方がよいのでしょうか?
まず脳梗塞を引き起こす危険因子について説明します。これらをきちんと管理することなく、水分摂取だけを十分にしても脳梗塞は全く予防できません。
■危険因子は?
脳梗塞の危険因子で最も悪いのが高血圧症です。2番目が心臓の病気(心房細動などの不整脈)、3番目が喫煙、4番目が糖尿病-の順になります。
高血圧症は、脳梗塞を含めて全ての種類の脳卒中において、最大の危険因子です。特徴を挙げるとすれば「特に症状がない」ことです。そのため、何ともないからと放置してしまい、あるとき、取り返しのつかない結果(半身のまひなど)が来ることになります。
特に日本人の高血圧症は「食塩感受性高血圧」と言って、塩分の取り過ぎに関連したものが多いことが知られています。このタイプの高血圧症は、他の原因のものに比べて脳卒中や心疾患が2倍くらい起こりやすいことが知られています。一方で、減塩の効果が出やすく、血圧の薬を飲みながら減塩することによって、薬を減らしたり、薬が要らなくなったりする場合もあります。
■発症しやすい季節は?
さて、脳卒中は冬の寒い時期の病気というイメージが強いのですが、脳卒中の中でも脳梗塞(脳の血管が詰まって重い障害を残す病気)は夏にもピークがあります。汗をたくさんかいたままで水分を補給しないでいると、体内の水分が不足し脱水になり、流れている血液が濃縮してドロドロした状態になります。ちょうど煮物を煮詰めると、水蒸気が飛んで煮汁がドロドロになるのと同じです。結果として、血液が固まりやすくなって、脳梗塞を起こしやすくなります。
水分補給はとても重要です。しかし、それ以前に、中年以降になったら一度にたくさんの汗をかくことを避けたり、きちんと健康診断を受けて腎臓や心臓の働きを調べてもらったりすることを優先してください。腎臓や心臓の働きが悪いのに、やみくもに水分を多く取ると、かえって命取りになる場合すらあります。
また、血管の壁の内側を覆っている細胞には、血栓を予防する働きがあるのですが、高齢になるとその働きが低下してきます。その結果として、血栓ができやすくなるのです。以前は何ともなかったからと思って、炎天下で草むしりを長時間したり、熱い風呂やサウナ風呂に長く入ったりして、脳梗塞を起こすことは決してまれではありません。
実は、十分な水分補給による脳梗塞の予防効果についての研究はいくつもありますが、その効果を実証できたものは今までにありません。しかし、脱水によって血液が濃縮されて、脳梗塞を起こしやすくなることは間違いありません。
■水はどのくらい飲む?
まず、かかりつけ医に心臓や腎臓のチェックを受けて、脱水を起こすような行動をできるだけ避け、その上で起床後、食間、入浴前後など、こまめに分けて水分を取ることが重要です。高齢になると喉の渇きを感じにくくなるため、生活の中に飲水習慣を組み込んでおく方がよいと思います。
しかし、体格や年齢の異なる皆さんに1日に何リットルと言う目標を決めるのは必ずしも適しません。寝る前の水分は少量にしておかないと、夜間に何度も排尿に起きてしまいます。昼間にウトウトしたりボーッとしたりしてしまうのでは、本末転倒になってしまいます。
「脳梗塞は予防が一番」
【相談者】
Mさん 74歳男性。脳梗塞にならないためには、水分をたくさん飲んだ方が良いと聞きましたが、1日に何リットルくらい飲めばよいのでしょうか? 夜寝る前にも飲んだ方がよいのでしょうか?
まず脳梗塞を引き起こす危険因子について説明します。これらをきちんと管理することなく、水分摂取だけを十分にしても脳梗塞は全く予防できません。
■危険因子は?
脳梗塞の危険因子で最も悪いのが高血圧症です。2番目が心臓の病気(心房細動などの不整脈)、3番目が喫煙、4番目が糖尿病-の順になります。
高血圧症は、脳梗塞を含めて全ての種類の脳卒中において、最大の危険因子です。特徴を挙げるとすれば「特に症状がない」ことです。そのため、何ともないからと放置してしまい、あるとき、取り返しのつかない結果(半身のまひなど)が来ることになります。
特に日本人の高血圧症は「食塩感受性高血圧」と言って、塩分の取り過ぎに関連したものが多いことが知られています。このタイプの高血圧症は、他の原因のものに比べて脳卒中や心疾患が2倍くらい起こりやすいことが知られています。一方で、減塩の効果が出やすく、血圧の薬を飲みながら減塩することによって、薬を減らしたり、薬が要らなくなったりする場合もあります。
■発症しやすい季節は?
さて、脳卒中は冬の寒い時期の病気というイメージが強いのですが、脳卒中の中でも脳梗塞(脳の血管が詰まって重い障害を残す病気)は夏にもピークがあります。汗をたくさんかいたままで水分を補給しないでいると、体内の水分が不足し脱水になり、流れている血液が濃縮してドロドロした状態になります。ちょうど煮物を煮詰めると、水蒸気が飛んで煮汁がドロドロになるのと同じです。結果として、血液が固まりやすくなって、脳梗塞を起こしやすくなります。
水分補給はとても重要です。しかし、それ以前に、中年以降になったら一度にたくさんの汗をかくことを避けたり、きちんと健康診断を受けて腎臓や心臓の働きを調べてもらったりすることを優先してください。腎臓や心臓の働きが悪いのに、やみくもに水分を多く取ると、かえって命取りになる場合すらあります。
また、血管の壁の内側を覆っている細胞には、血栓を予防する働きがあるのですが、高齢になるとその働きが低下してきます。その結果として、血栓ができやすくなるのです。以前は何ともなかったからと思って、炎天下で草むしりを長時間したり、熱い風呂やサウナ風呂に長く入ったりして、脳梗塞を起こすことは決してまれではありません。
実は、十分な水分補給による脳梗塞の予防効果についての研究はいくつもありますが、その効果を実証できたものは今までにありません。しかし、脱水によって血液が濃縮されて、脳梗塞を起こしやすくなることは間違いありません。
■水はどのくらい飲む?
まず、かかりつけ医に心臓や腎臓のチェックを受けて、脱水を起こすような行動をできるだけ避け、その上で起床後、食間、入浴前後など、こまめに分けて水分を取ることが重要です。高齢になると喉の渇きを感じにくくなるため、生活の中に飲水習慣を組み込んでおく方がよいと思います。
しかし、体格や年齢の異なる皆さんに1日に何リットルと言う目標を決めるのは必ずしも適しません。寝る前の水分は少量にしておかないと、夜間に何度も排尿に起きてしまいます。昼間にウトウトしたりボーッとしたりしてしまうのでは、本末転倒になってしまいます。
「脳梗塞は予防が一番」