第27回 足の病気
足の病気(上)~外反母趾~
2018.6.19
親指付け根「くの字」に 靴の指導や運動で治療
【相談者】
Fさん 55歳女性。足の親指が外側に曲がっていて、親指の付け根が靴に当たって痛みます。最近は出っ張りもひどくなってきて痛みを感じることが多くなってきたのですが病院を受診した方がよいでしょうか。
母趾(ぼし)(足の親指)が第2趾(人差し指)の方に「くの字」に曲がり、付け根の骨が内側に突出している病態を外反母趾と呼びます。外反母趾では、母趾の付け根の部分が靴に当たって痛みを感じます。圧迫時間が長くなると炎症を起こして赤く腫れ上がったり、ひどくなると皮膚の潰瘍を生じたりすることもあります。
また変形が進行してくると、母趾と第2趾が重なり、足の指や裏側にたこができて痛みを生じることもあります。外反母趾の原因は、生まれつきの足の形、履物や年齢などが関係しています。男性よりも圧倒的に女性に多く発症し、履物に関しては先の細い靴やハイヒールが原因になるといわれています。
■診断は?
外反母趾は外見である程度分かりますが、正確な診断にはX線撮影検査を行います(図1)。外反母趾角が20度以上であることが診断の基準とされています。その他には、母趾以外の変形、指の重なり具合、たこの場所などを診ていきます。
■治療は?
重症度と痛みに応じて、靴の指導、運動療法、装具療法、薬物療法、手術を行います。基本的に変形を矯正するためには手術が必要となりますが、手術以外の方法でも症状を軽減させることはできます。
(1)靴の指導: 母趾付け根の突き出た部分が圧迫されないような靴を選ぶことが重要です。足先が広めで指が自由に動かせるくらいのゆとりがあり、ヒールが低いものが適しています。こまめに靴を脱いだり、用途によって履き分けたりすることで変形の予防にもつながります。
(2)運動療法: 指を開くような体操を行います。手を使って外反母趾を矯正する方向へ母趾を動かす運動のほか、足の筋力で指を開く体操、ゴムひもなどを両母趾にかけて行う体操(Hohmann(ホーマン)体操)などがあります(図2)。
(3)装具療法: 足の土踏まずや横アーチを高くした足底挿板や外反母趾矯正装具などを用います(図3)。靴との適合性が悪い場合には、症状を悪化させてしまうこともあるために注意が必要です。
(4)薬物療法: 消炎鎮痛効果のある湿布・軟膏(こう)・クリームなどの外用薬を他の治療と併用します。
■手術は?
痛みのコントロールがうまくいかない場合や変形が気になる場合には手術します。今までに150種類以上の手術が行われていますが、骨切り術(骨を切って変形を矯正して金属で固定する方法)が一般的です。母趾以外にも変形や痛みが及んでいる場合には、その指に対しても手術を追加することがあります。
外反母趾は不適切な靴や装具を使用していると症状が悪化していきますので、お困りの方は病院を受診されることをお勧めします。
【相談者】
Fさん 55歳女性。足の親指が外側に曲がっていて、親指の付け根が靴に当たって痛みます。最近は出っ張りもひどくなってきて痛みを感じることが多くなってきたのですが病院を受診した方がよいでしょうか。
母趾(ぼし)(足の親指)が第2趾(人差し指)の方に「くの字」に曲がり、付け根の骨が内側に突出している病態を外反母趾と呼びます。外反母趾では、母趾の付け根の部分が靴に当たって痛みを感じます。圧迫時間が長くなると炎症を起こして赤く腫れ上がったり、ひどくなると皮膚の潰瘍を生じたりすることもあります。
また変形が進行してくると、母趾と第2趾が重なり、足の指や裏側にたこができて痛みを生じることもあります。外反母趾の原因は、生まれつきの足の形、履物や年齢などが関係しています。男性よりも圧倒的に女性に多く発症し、履物に関しては先の細い靴やハイヒールが原因になるといわれています。
■診断は?
外反母趾は外見である程度分かりますが、正確な診断にはX線撮影検査を行います(図1)。外反母趾角が20度以上であることが診断の基準とされています。その他には、母趾以外の変形、指の重なり具合、たこの場所などを診ていきます。
■治療は?
重症度と痛みに応じて、靴の指導、運動療法、装具療法、薬物療法、手術を行います。基本的に変形を矯正するためには手術が必要となりますが、手術以外の方法でも症状を軽減させることはできます。
(1)靴の指導: 母趾付け根の突き出た部分が圧迫されないような靴を選ぶことが重要です。足先が広めで指が自由に動かせるくらいのゆとりがあり、ヒールが低いものが適しています。こまめに靴を脱いだり、用途によって履き分けたりすることで変形の予防にもつながります。
(2)運動療法: 指を開くような体操を行います。手を使って外反母趾を矯正する方向へ母趾を動かす運動のほか、足の筋力で指を開く体操、ゴムひもなどを両母趾にかけて行う体操(Hohmann(ホーマン)体操)などがあります(図2)。
(3)装具療法: 足の土踏まずや横アーチを高くした足底挿板や外反母趾矯正装具などを用います(図3)。靴との適合性が悪い場合には、症状を悪化させてしまうこともあるために注意が必要です。
(4)薬物療法: 消炎鎮痛効果のある湿布・軟膏(こう)・クリームなどの外用薬を他の治療と併用します。
■手術は?
痛みのコントロールがうまくいかない場合や変形が気になる場合には手術します。今までに150種類以上の手術が行われていますが、骨切り術(骨を切って変形を矯正して金属で固定する方法)が一般的です。母趾以外にも変形や痛みが及んでいる場合には、その指に対しても手術を追加することがあります。
外反母趾は不適切な靴や装具を使用していると症状が悪化していきますので、お困りの方は病院を受診されることをお勧めします。
足の病気(中)~足底腱膜炎~
2018.6.26
かかとの内側に痛み ストレッチで治療・予防
【相談者】
Mさん 65歳女性。1カ月ほど前から、かかとの痛みが続いています。特に起きてトイレに行こうとしたときに痛みが出ます。しばらくするとあまり感じなくなるのですが、夕方になるとまた痛くなってきます。自然に治るのでしょうか。
Mさんの症状は足底(そくてい)腱膜(けんまく)炎の可能性が高いです。足底腱膜とは、足の裏側にあって、かかとの骨と足の指の付け根をつなぐ扇状の膜のことです。
この足底腱膜が付着する部位(付着部)には、強い牽引(けんいん)力(引っ張る力)とともに、着地時の荷重による衝撃(圧迫力)の両方が加わることで過大な負荷が集中します(図1)。長時間の立ち仕事や歩行、体重増加、スポーツ(ランニングやジャンプなど)による使い過ぎなどにより、負荷を繰り返すと、足底腱膜の付着部に小さな傷や変性が起き、痛みが生じると考えられています。
■症状は?
かかとの内側前方に痛みが出ます。朝起きたとき、最初の1歩目に痛みを感じるというのが特徴的で、歩くうちに痛みは徐々に軽減し、夕方になって歩行量が増えると再び痛みが強くなってきます。
同様の症状は、スポーツの際にも現れます。ランニングなどの開始時は痛みを強く感じますが、運動を続けるうちに徐々に軽快し、長時間になると再び痛みが強くなってきます。
■診断は?
次の症状が認められ、検査により他の病気(神経や腱の障害、腫瘍病変など)を除外できた場合に足底腱膜炎と診断します。
・足底腱膜とかかとの骨の付着部周囲に押さえたときの痛みがある。
・長時間立っている、歩行、走行、歩行開始時のいずれかのときに、足底腱膜とかかとの骨の付着部周囲に痛みが現れる。
X線撮影検査では、かかとに骨棘(こつきょく)という骨のとげが認められることがあります(図2)。MRI(磁気共鳴画像装置)検査では、足底腱膜の肥厚や信号変化などが分かることもあります。他の病気を除外し、診断を確定させるためにも有効です。
■治療は?
痛みがある部位に負荷がかかると悪化するので、まずは運動を減らすなどして安静にします。痛みが非常に強いときはステロイドの局所注射をすることもありますが、かかとの脂肪組織の萎縮や腱膜の断裂を招く恐れがあり注意が必要です。
ストレッチは足底腱膜炎の治療・予防には特に重要で、足の裏(足底腱膜)とふくらはぎ(アキレス腱)の両方のストレッチを行います(図3)。足の形にあった靴を履くようにして足底挿板を用いることも有効です。
これらの治療を行っても治らない場合には、体外衝撃波治療や手術治療が行われます。
体外衝撃波治療は、衝撃波をかかとに当てることにより、痛みを伝える末梢神経の働きを弱くし、傷んだ足底腱膜の修復を促進して痛みを和らげる方法です。難治性の足底腱膜炎に対しては保険適用がありますが、専用の医療機器が必要なため、実施できる病院は限られます。
手術治療には、足底腱膜の付着部を切り離す方法やかかとの骨棘を切除する方法などがあります。ふくらはぎの硬さが原因の場合には、筋肉を若干伸ばす手術が有効なこともあります。
【相談者】
Mさん 65歳女性。1カ月ほど前から、かかとの痛みが続いています。特に起きてトイレに行こうとしたときに痛みが出ます。しばらくするとあまり感じなくなるのですが、夕方になるとまた痛くなってきます。自然に治るのでしょうか。
Mさんの症状は足底(そくてい)腱膜(けんまく)炎の可能性が高いです。足底腱膜とは、足の裏側にあって、かかとの骨と足の指の付け根をつなぐ扇状の膜のことです。
この足底腱膜が付着する部位(付着部)には、強い牽引(けんいん)力(引っ張る力)とともに、着地時の荷重による衝撃(圧迫力)の両方が加わることで過大な負荷が集中します(図1)。長時間の立ち仕事や歩行、体重増加、スポーツ(ランニングやジャンプなど)による使い過ぎなどにより、負荷を繰り返すと、足底腱膜の付着部に小さな傷や変性が起き、痛みが生じると考えられています。
■症状は?
かかとの内側前方に痛みが出ます。朝起きたとき、最初の1歩目に痛みを感じるというのが特徴的で、歩くうちに痛みは徐々に軽減し、夕方になって歩行量が増えると再び痛みが強くなってきます。
同様の症状は、スポーツの際にも現れます。ランニングなどの開始時は痛みを強く感じますが、運動を続けるうちに徐々に軽快し、長時間になると再び痛みが強くなってきます。
■診断は?
次の症状が認められ、検査により他の病気(神経や腱の障害、腫瘍病変など)を除外できた場合に足底腱膜炎と診断します。
・足底腱膜とかかとの骨の付着部周囲に押さえたときの痛みがある。
・長時間立っている、歩行、走行、歩行開始時のいずれかのときに、足底腱膜とかかとの骨の付着部周囲に痛みが現れる。
X線撮影検査では、かかとに骨棘(こつきょく)という骨のとげが認められることがあります(図2)。MRI(磁気共鳴画像装置)検査では、足底腱膜の肥厚や信号変化などが分かることもあります。他の病気を除外し、診断を確定させるためにも有効です。
■治療は?
痛みがある部位に負荷がかかると悪化するので、まずは運動を減らすなどして安静にします。痛みが非常に強いときはステロイドの局所注射をすることもありますが、かかとの脂肪組織の萎縮や腱膜の断裂を招く恐れがあり注意が必要です。
ストレッチは足底腱膜炎の治療・予防には特に重要で、足の裏(足底腱膜)とふくらはぎ(アキレス腱)の両方のストレッチを行います(図3)。足の形にあった靴を履くようにして足底挿板を用いることも有効です。
これらの治療を行っても治らない場合には、体外衝撃波治療や手術治療が行われます。
体外衝撃波治療は、衝撃波をかかとに当てることにより、痛みを伝える末梢神経の働きを弱くし、傷んだ足底腱膜の修復を促進して痛みを和らげる方法です。難治性の足底腱膜炎に対しては保険適用がありますが、専用の医療機器が必要なため、実施できる病院は限られます。
手術治療には、足底腱膜の付着部を切り離す方法やかかとの骨棘を切除する方法などがあります。ふくらはぎの硬さが原因の場合には、筋肉を若干伸ばす手術が有効なこともあります。
足の病気(下)~足関節捻挫~
2018.7.3
軽視すると慢性化 重症患者は靱帯手術も
【相談者】
Tさん 63歳男性。段差につまずいて転倒した際に右足首をひねってしまいました。ただの捻挫だと思い、湿布を貼って様子を見ていましたが痛みが治まりません。このまま放っておいてもよいのでしょうか。
捻挫は日常生活で関節をひねったときに発生する筋肉と靭帯(じんたい)の損傷のことです。捻挫の中でも、特に足首の捻挫(足関節捻挫)が圧倒的に多く、歩いているときに段差につまずいて足首をひねり、その後に足首が腫れてきて内出血などが見られることもあります。
スポーツによる外傷としては捻挫が最も頻度が高く、サッカーやバスケットボールなど「走る」「飛ぶ」といった競技中にも発生しやすい特徴があります。ただの捻挫だと軽視していると何度も繰り返し、慢性化して後遺症を残すことも多いため注意が必要です。
■どこを傷める?
足首の捻挫には大きく分けて足関節内返しによる捻挫と、足関節外返しによる捻挫の2種類があります(図1)。内返し捻挫の方が多く、前距腓(きょひ)靱帯という外くるぶしの前についている靭帯を傷めることが多いです(図2)。内返し捻挫は軽症が多いのですが、ねじれの程度がひどくなると踵腓(しょうひ)靭帯、前下脛腓(けいひ)靭帯や内側の靭帯まで損傷することがあります。
受傷後に体重をかけられない場合や内側にまで皮下出血が見られる場合には、より重症である可能性が高く注意が必要です。外返し捻挫は、頻度は少ない半面、重症であることが多く、ひねり具合によって、ある程度重症度を予測することができます。
■診断は?
足のひねり方や痛み、腫れ、内出血の場所などにより診断できます。靱帯の損傷程度を確認するために、受傷部位にストレスをかけてレントゲン撮影を行うこともあります。最近では超音波検査で確認することが多くなってきています。
捻挫と思っていても他の外傷であることがあります。内返し捻挫と似たひねりでおこる外傷として、骨折や腓骨筋腱脱臼、二分靭帯損傷や骨軟骨損傷などがあり、これらが疑われる場合にはレントゲンやMRI(磁気共鳴画像装置)の撮影を行います。
■治療は?
初期治療として「PRICE処置」を行います。外傷を受けたときなどの一般的な応急処置のことで、患部の保護(Protection)、安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)の頭文字をとったものです(図3)。
その後、重症例ではさらに2~3週間のギプス固定などを行います。不安定性が強い、捻挫を繰り返す、痛みが取れないといった場合などには靭帯を修復・再建する手術などを行います。
たかが捻挫と思っていても、初期にしっかりと対応しないと関節が緩くなり、捻挫しやすい足首(足関節不安症)になることで、将来の足首の痛みの原因にもなります。また、違う外傷である可能性もあり、適切な診断と治療を受けないと痛みが長引きます。捻挫をして歩けないほど痛いときはもちろんのこと「ちょっと普通の捻挫とは違うな」「なかなか治らないな」と思った場合にも病院を受診することをお勧めします。
【相談者】
Tさん 63歳男性。段差につまずいて転倒した際に右足首をひねってしまいました。ただの捻挫だと思い、湿布を貼って様子を見ていましたが痛みが治まりません。このまま放っておいてもよいのでしょうか。
捻挫は日常生活で関節をひねったときに発生する筋肉と靭帯(じんたい)の損傷のことです。捻挫の中でも、特に足首の捻挫(足関節捻挫)が圧倒的に多く、歩いているときに段差につまずいて足首をひねり、その後に足首が腫れてきて内出血などが見られることもあります。
スポーツによる外傷としては捻挫が最も頻度が高く、サッカーやバスケットボールなど「走る」「飛ぶ」といった競技中にも発生しやすい特徴があります。ただの捻挫だと軽視していると何度も繰り返し、慢性化して後遺症を残すことも多いため注意が必要です。
■どこを傷める?
足首の捻挫には大きく分けて足関節内返しによる捻挫と、足関節外返しによる捻挫の2種類があります(図1)。内返し捻挫の方が多く、前距腓(きょひ)靱帯という外くるぶしの前についている靭帯を傷めることが多いです(図2)。内返し捻挫は軽症が多いのですが、ねじれの程度がひどくなると踵腓(しょうひ)靭帯、前下脛腓(けいひ)靭帯や内側の靭帯まで損傷することがあります。
受傷後に体重をかけられない場合や内側にまで皮下出血が見られる場合には、より重症である可能性が高く注意が必要です。外返し捻挫は、頻度は少ない半面、重症であることが多く、ひねり具合によって、ある程度重症度を予測することができます。
■診断は?
足のひねり方や痛み、腫れ、内出血の場所などにより診断できます。靱帯の損傷程度を確認するために、受傷部位にストレスをかけてレントゲン撮影を行うこともあります。最近では超音波検査で確認することが多くなってきています。
捻挫と思っていても他の外傷であることがあります。内返し捻挫と似たひねりでおこる外傷として、骨折や腓骨筋腱脱臼、二分靭帯損傷や骨軟骨損傷などがあり、これらが疑われる場合にはレントゲンやMRI(磁気共鳴画像装置)の撮影を行います。
■治療は?
初期治療として「PRICE処置」を行います。外傷を受けたときなどの一般的な応急処置のことで、患部の保護(Protection)、安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)の頭文字をとったものです(図3)。
その後、重症例ではさらに2~3週間のギプス固定などを行います。不安定性が強い、捻挫を繰り返す、痛みが取れないといった場合などには靭帯を修復・再建する手術などを行います。
たかが捻挫と思っていても、初期にしっかりと対応しないと関節が緩くなり、捻挫しやすい足首(足関節不安症)になることで、将来の足首の痛みの原因にもなります。また、違う外傷である可能性もあり、適切な診断と治療を受けないと痛みが長引きます。捻挫をして歩けないほど痛いときはもちろんのこと「ちょっと普通の捻挫とは違うな」「なかなか治らないな」と思った場合にも病院を受診することをお勧めします。