第28回 夏風邪
夏に起こりやすい病気 ~夏風邪~
2018.7.31
十分な睡眠と水分補給を うがい・手洗い習慣に
【相談者】
Tさん 43歳女性。数日前より鼻水や喉の痛み、咳(せき)といった症状が続いています。風邪だと思い、市販薬を服用していますがなかなか回復しません。症状がひどくなる前に受診したほうがよいでしょうか?
【相談者】
暑くてバテてくるころに気を付けたいのが夏風邪です。主な原因は、ウイルス感染によるものです。夏風邪は腸管で増殖するエンテロウイルスやアデノウイルスといった暑くて湿度の高い環境を好むウイルスによって多く発生します。大半は子供の間で流行が騒がれる夏風邪ですが、大人がかかると重症化することもあります。家族で気を付けたい代表的な夏のウイルス感染症について紹介します。
■症状は?
咽頭結膜熱(プール熱): プールの水を媒介したり、タオルを共有することで感染しやすいことから「プール熱」と呼ばれます。アデノウイルスが原因の病気で、感染力が非常に強く、口や鼻、喉、目の結膜から感染します。唾液や目やになどから感染するので、手で直接触れないようにしましょう。また、タオルの共有を避け、しっかりと手洗いをしましょう。
大人の大半はプール熱の子どもを看病しての二次感染によるものです。通常、大人が感染しても子どもほどひどくはならないと言われていますが、免疫力が落ちているときは、重症化する可能性もあります。また、原因となるアデノウイルスによって肺炎などの呼吸器疾患、胃腸炎などの消化器疾患が引き起こされる可能性もあり、注意が必要です。
手足口病: コクサッキーウイルスやエンテロウイルス類が原因で起こる病気です。大人の場合は、プール熱と同様に子どもの看病から二次感染するケースが見られます。大人は、幼少期の頃にすでにこれらのウイルスに感染している場合が多く、あまり発症することはありませんが、手足口病の原因となるウイルスはいくつかの型が存在するので何度もかかることも珍しくはありません。一般的には、38度以下の発熱で安静とこまめな水分補給を心掛ければ数日間で快方へ向かいますが、大人が感染した場合は重症化し、38度を超える高熱に痛みの強い水疱(すいほう)を伴うことがあります。
ヘルパンギーナ: 夏季に小児の間で流行する急性ウイルス性咽頭炎で、38度以上の高熱、口内の水疱、喉の痛みが特徴です。感染経路は手足口病と同じで、免疫力が落ちていると大人でも感染することがあり、39度を超える高熱や倦怠(けんたい)感、関節の痛みなど子どもより重症化することもあります。
この他にも、沖縄で夏にインフルエンザや麻疹(はしか)が流行したこともありますので、旅行などの際には現地の情報にも注意が必要です。
■対処法は?
これら原因となるウイルスに対する有効な治療薬はなく、症状を緩和させる対症療法を行います。睡眠を十分に取り体を休ませましょう。症状が治まるまでエアコンの温度は冷やし過ぎないよう設定し、タイマーなどを活用しながら用いてください。
食事は、おかゆやうどん、ゼリーなど、軟らかく喉への刺激が少ないものにしましょう。また、脱水を避けるため水分補給もしっかり行います。冷え過ぎた飲み物はなるべく避け、常温のミネラルウオーターやスポーツドリンク、経口補水液がお薦めです。食事や水分補給が困難なほど症状がひどい場合は、点滴による治療が有効ですので、無理をせず医療機関を受診してください。
■予防は?
特定の治療法や予防接種がないため、日頃から免疫力を下げない注意が大切です。家庭内でのうがいと手洗いを習慣化させ、発症後はトイレや洗面所でのタオルの共用は避けましょう。バランスの良い食事はもちろん大切です。またエアコンは26~28度に設定し、部屋の冷やし過ぎに注意してください。しっかりと睡眠を取り、規則正しい生活を心掛け、暑い夏を健康に過ごしましょう。