第25回 シェーグレン症候群
シェーグレン症候群(上)
2018.5.8
口や目乾き生活に支障 中高年女性に多く発症
【相談者】
Kさん 67歳女性。3カ月以上前から唾液が少なくなり、口が乾いてしゃべりづらく、水分で口を湿らせながらでないと会話ができません。涙が少なく目も乾き、眼科ではドライアイと言われています。普段、飲んでいる薬はありません。口の乾きを診察してもらった方がよいでしょうか。
口の乾き(ドライマウス)や目の乾き(ドライアイ)を起こす病気にシェーグレン症候群があります。会話や食事など日常生活に支障があるほどに口が乾くようであれば、シェーグレン症候群かどうかを調べるために受診された方がよいでしょう。
■唾液の働きは?
発見者であるスウェーデン人医師シェーグレン氏にちなんで命名されました。唾液を作る唾液腺や涙を作る涙腺に障害が起こり、唾液や涙が出にくくなり、口の乾きや目の乾きが起こる病気です。乾燥症候群とも呼ばれます。
唾液は人の体にとって重要な働きを持っています。まず口の中を潤し、食物を円滑に喉に送ります。ウイルスと細菌の侵入を防ぐ免疫物質(免疫グロブリン)や酵素(リゾチーム)、飲食物のデンプンを消化する酵素(アミラーゼ)、歯を保護する糖たんぱくなどを含んでいます。
さらに味覚にも関与しています。味覚は唾液に溶けた飲食物の分子またはイオンが刺激となって起こる感覚だからです。唾液を作る場所は口の中にある耳下腺、顎下腺、舌下腺と小唾液腺です(図1)。1日の量は1~1・5リットルとされます。
■患者数は?
シェーグレン症候群は、免疫の異常な作用により、ウイルスと細菌から体を守ってくれる体内の物質が、自分の体のある部分を敵だと間違えて攻撃するために起きる膠原(こうげん)病の一種です。国の難病に指定されており、定められた基準にもとづいて重症と診断された人は医療費助成を申請できます。
原因は完全には解明されてはいませんが、ウイルスの感染がきっかけと考えられています。40~60代の中高年女性に多い(男女比は1対17)のが特徴です。日本には約6万8400人の患者さんがいます。一般にはまだ広く知られておらず、ただ口が乾くだけと我慢して病院を受診しない人も多く、実際の患者さんの数はもっと多いと考えられます。
■症状は?
唾液が少なくなることで、口がカパカパして会話や飲み込みがしづらくなります(図2)。口の中が不衛生となるため口内炎や虫歯になりやすく、耳下腺が化膿して腫れることもあります。口を湿らせるため夜間も水を飲むのでぐっすり眠れず寝不足になります。味が分からなくなることもあります。
涙が出にくくなり目が乾くため、痛みを訴える人もいます。口や目以外にも鼻や皮膚が乾く場合があります。
甲状腺、肺、肝臓、腎臓など全身の臓器の障害によるさまざまな症状が半数の患者さんに現れます。甲状腺に障害が出た場合は甲状腺ホルモン低下による倦怠(けんたい)感や便秘が起こり、肺の場合は肺炎になりせきが出ます。肝臓の場合は黄疸(おうだん)が現れます。腎臓だと多尿となります。患者さんの40%は、関節の痛みや変形が起こる関節リウマチ、皮膚が厚く硬くなる全身性硬化症などの他の膠原病を合併します。
【相談者】
Kさん 67歳女性。3カ月以上前から唾液が少なくなり、口が乾いてしゃべりづらく、水分で口を湿らせながらでないと会話ができません。涙が少なく目も乾き、眼科ではドライアイと言われています。普段、飲んでいる薬はありません。口の乾きを診察してもらった方がよいでしょうか。
口の乾き(ドライマウス)や目の乾き(ドライアイ)を起こす病気にシェーグレン症候群があります。会話や食事など日常生活に支障があるほどに口が乾くようであれば、シェーグレン症候群かどうかを調べるために受診された方がよいでしょう。
■唾液の働きは?
発見者であるスウェーデン人医師シェーグレン氏にちなんで命名されました。唾液を作る唾液腺や涙を作る涙腺に障害が起こり、唾液や涙が出にくくなり、口の乾きや目の乾きが起こる病気です。乾燥症候群とも呼ばれます。
唾液は人の体にとって重要な働きを持っています。まず口の中を潤し、食物を円滑に喉に送ります。ウイルスと細菌の侵入を防ぐ免疫物質(免疫グロブリン)や酵素(リゾチーム)、飲食物のデンプンを消化する酵素(アミラーゼ)、歯を保護する糖たんぱくなどを含んでいます。
さらに味覚にも関与しています。味覚は唾液に溶けた飲食物の分子またはイオンが刺激となって起こる感覚だからです。唾液を作る場所は口の中にある耳下腺、顎下腺、舌下腺と小唾液腺です(図1)。1日の量は1~1・5リットルとされます。
■患者数は?
シェーグレン症候群は、免疫の異常な作用により、ウイルスと細菌から体を守ってくれる体内の物質が、自分の体のある部分を敵だと間違えて攻撃するために起きる膠原(こうげん)病の一種です。国の難病に指定されており、定められた基準にもとづいて重症と診断された人は医療費助成を申請できます。
原因は完全には解明されてはいませんが、ウイルスの感染がきっかけと考えられています。40~60代の中高年女性に多い(男女比は1対17)のが特徴です。日本には約6万8400人の患者さんがいます。一般にはまだ広く知られておらず、ただ口が乾くだけと我慢して病院を受診しない人も多く、実際の患者さんの数はもっと多いと考えられます。
■症状は?
唾液が少なくなることで、口がカパカパして会話や飲み込みがしづらくなります(図2)。口の中が不衛生となるため口内炎や虫歯になりやすく、耳下腺が化膿して腫れることもあります。口を湿らせるため夜間も水を飲むのでぐっすり眠れず寝不足になります。味が分からなくなることもあります。
涙が出にくくなり目が乾くため、痛みを訴える人もいます。口や目以外にも鼻や皮膚が乾く場合があります。
甲状腺、肺、肝臓、腎臓など全身の臓器の障害によるさまざまな症状が半数の患者さんに現れます。甲状腺に障害が出た場合は甲状腺ホルモン低下による倦怠(けんたい)感や便秘が起こり、肺の場合は肺炎になりせきが出ます。肝臓の場合は黄疸(おうだん)が現れます。腎臓だと多尿となります。患者さんの40%は、関節の痛みや変形が起こる関節リウマチ、皮膚が厚く硬くなる全身性硬化症などの他の膠原病を合併します。
シェーグレン症候群(下)
2018.5.15
四つの検査で診断 唾液分泌促し歯を清潔に
【相談者】
Kさん 67歳女性。3カ月前から口の中が乾いて、味が分かりにくくなってきました。涙も出にくくなっています。かかりつけ医には、シェーグレン症候群の疑いがあるので病院で検査するように勧められました。どのような検査や治療があるのでしょうか。
シェーグレン症候群は、中高年の女性に多い慢性の病気です。高齢者の人口増加に伴って患者さんは増加傾向にあります。自分の体内の免疫システムの異常で、自分自身の唾液腺や涙腺を敵とみなして攻撃するため、唾液腺や涙腺の働きが低下して口や目が乾きます。
3カ月以上、口の乾きが続いている場合や、話しにくい、味が分かりにくい、食べにくいなど日常生活に支障がある場合は受診した方がよいでしょう。精神的ストレスで一時的に口が乾くケースもあるので3カ月を受診の目安としてください。
■検査は?
シェーグレン症候群だけを検出する検査はまだ開発されていません。そのため厚生労働省が定めたシェーグレン症候群の診断基準に沿って(1)血液検査(2)口の検査(3)目の検査(4)組織の検査を行います(表)。
これらの検査のうち、二つの検査で異常が出た場合にシェーグレン症候群と診断します。一般的には体に負担の少ない血液検査あるいは口の検査を最初に行い、次に目の検査、最後に組織の検査を行います。四つの検査全てを行うわけではなく、二つの検査で異常が出た時点で終了します。シェーグレン症候群と診断した場合は他の病気を合併していないかを調べます。
患者さんの半数は10年以上経ても症状の悪化はありません。残りの半数の方は何らかの全身症状が出ます。しかし、この病気自体で命を落とすことはほとんどありません。
■治療は?
完全な治療法は残念ながらまだありませんが、症状を緩和する方法はいくつもあります。口の乾きには唾液を出しやすくする飲み薬があります。飲み薬は効果が現れるまでに約3カ月間を要するので、焦らずに飲み続けることが大事です。漢方薬を用いることもあります。唾液を補充するスプレー唾液は取り扱いが簡便でよく使用されます。
目の乾きには、涙を補充する点眼薬が使われ、眼科での治療が必要となる場合があります。甲状腺、肺、肝臓、腎臓などが障害された場合や関節リウマチ、全身性硬化症など他の膠原(こうげん)病を合併している場合は内科での治療が必要となります。
■生活上の注意点は?
日常生活では過度な不安を抱かず、前向きかつ気長に病気と付き合うことが大事です。以下に具体的な注意事項を挙げます。
(1)虫歯にならないよう糖を含まないガムをかんで唾液の分泌を促します。
(2)耳の下をマッサージして、唾液を出やすくする工夫も重要です(図)。
(3)1日に何度もうがいをして口の中をきれいにしましょう。
(4)軟らかい歯ブラシを使って歯を清潔に保ちましょう。
(5)バランスの取れた食事をよくかんでから飲み込みましょう。唾液の分泌を促すような梅干し、レモン、酢の物を積極的に取ることがおすすめです。逆に香辛料などの刺激の強い食品、口に付着しやすい餅やパンは避けた方がよいでしょう。
(6)疲れをためないように規則正しい生活を送り、筋力の維持や気分転換のために適度の運動をしましょう。
【相談者】
Kさん 67歳女性。3カ月前から口の中が乾いて、味が分かりにくくなってきました。涙も出にくくなっています。かかりつけ医には、シェーグレン症候群の疑いがあるので病院で検査するように勧められました。どのような検査や治療があるのでしょうか。
シェーグレン症候群は、中高年の女性に多い慢性の病気です。高齢者の人口増加に伴って患者さんは増加傾向にあります。自分の体内の免疫システムの異常で、自分自身の唾液腺や涙腺を敵とみなして攻撃するため、唾液腺や涙腺の働きが低下して口や目が乾きます。
3カ月以上、口の乾きが続いている場合や、話しにくい、味が分かりにくい、食べにくいなど日常生活に支障がある場合は受診した方がよいでしょう。精神的ストレスで一時的に口が乾くケースもあるので3カ月を受診の目安としてください。
■検査は?
シェーグレン症候群だけを検出する検査はまだ開発されていません。そのため厚生労働省が定めたシェーグレン症候群の診断基準に沿って(1)血液検査(2)口の検査(3)目の検査(4)組織の検査を行います(表)。
これらの検査のうち、二つの検査で異常が出た場合にシェーグレン症候群と診断します。一般的には体に負担の少ない血液検査あるいは口の検査を最初に行い、次に目の検査、最後に組織の検査を行います。四つの検査全てを行うわけではなく、二つの検査で異常が出た時点で終了します。シェーグレン症候群と診断した場合は他の病気を合併していないかを調べます。
患者さんの半数は10年以上経ても症状の悪化はありません。残りの半数の方は何らかの全身症状が出ます。しかし、この病気自体で命を落とすことはほとんどありません。
■治療は?
完全な治療法は残念ながらまだありませんが、症状を緩和する方法はいくつもあります。口の乾きには唾液を出しやすくする飲み薬があります。飲み薬は効果が現れるまでに約3カ月間を要するので、焦らずに飲み続けることが大事です。漢方薬を用いることもあります。唾液を補充するスプレー唾液は取り扱いが簡便でよく使用されます。
目の乾きには、涙を補充する点眼薬が使われ、眼科での治療が必要となる場合があります。甲状腺、肺、肝臓、腎臓などが障害された場合や関節リウマチ、全身性硬化症など他の膠原(こうげん)病を合併している場合は内科での治療が必要となります。
■生活上の注意点は?
日常生活では過度な不安を抱かず、前向きかつ気長に病気と付き合うことが大事です。以下に具体的な注意事項を挙げます。
(1)虫歯にならないよう糖を含まないガムをかんで唾液の分泌を促します。
(2)耳の下をマッサージして、唾液を出やすくする工夫も重要です(図)。
(3)1日に何度もうがいをして口の中をきれいにしましょう。
(4)軟らかい歯ブラシを使って歯を清潔に保ちましょう。
(5)バランスの取れた食事をよくかんでから飲み込みましょう。唾液の分泌を促すような梅干し、レモン、酢の物を積極的に取ることがおすすめです。逆に香辛料などの刺激の強い食品、口に付着しやすい餅やパンは避けた方がよいでしょう。
(6)疲れをためないように規則正しい生活を送り、筋力の維持や気分転換のために適度の運動をしましょう。