第24回 認知症
認知症(上)
2018.4.10
脳細胞壊れ発症 前兆あればすぐ受診を
【相談者】
Aさん 80歳女性。最近、家族から頻繁に物忘れがあると言われます。私も認知症になったのではないかと心配で相談に来ました。
超高齢社会を迎え、認知症を患う人は増えています。厚生労働省によると、認知症高齢者数は2012年に462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人でしたが、25年には約5人に1人が認知症になると推計しています。
■物忘れとの違いは?
物忘れがあると「認知症では?」と言われますが、病気に伴う物忘れだけではなく、加齢に伴うことで出現する物忘れもあります。
加齢に伴う物忘れは、年を重ねるごとに誰にも見られる現象です。出来事などの一部を忘れますが、ヒントで思い出すことができます。一方、病気による物忘れは、出来事など全てを忘れてしまい、ヒントを出しても思い出すことができません(表)。
■種類は?
認知症は、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりすることで障害が起こり、日常生活を行う上で支障が出ている状態のことを指します。
認知症の代表的な種類としては、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症があります(図)。脳が障害される部位によって異なる症状を示します。
一番多く見られるアルツハイマー型認知症の特徴としては、70歳以上の女性に発症することが多く、ゆっくり進行するため、いつから病気になったかが分かりません。アルツハイマー型認知症になると、脳にある記憶を支配する脳の海馬が萎縮していきます。
症状は、初期段階から物忘れが目立ち、時間の間隔が分からなくなり、判断力や理解力も徐々に低下します。そのため、何度も同じ話を繰り返したり、道に迷ったりすることが増えていきます。
認知症の症状として、記憶障害・失語など脳の神経細胞の減少や破壊によって引き起こされる「中核症状」があり、全ての認知症の人に見られる症状があります。
他に、徘徊(はいかい)・抑うつなど本人の性格や背景、体調や環境などが影響し反応的に生じる「行動・心理症状」が存在します。これは、全ての認知症の方に見られるわけではありません。周囲の環境を整え、対応などを工夫することで、症状は緩和することがあります。
■症状は?
認知症は、突然に症状が現れる病気ではありません。前兆として、約束を忘れたり、通い慣れた道でも迷ったり、家族の名前が出てこなかったり、といったサインを出しています。そのため「おかしいな?」と思ったら、早めに受診することをお勧めします。
早期に認知症を発見し、薬の服用を開始することによって多くの場合、認知症の進行を遅らせることが可能です。また、認知症の原因となる病気によって適切な治療方法が異なるため、原因を早期に発見することが大切になります。
認知症でなくても、認知症に似た症状を示す病気があります。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫などで、これらを早期に適切に治療することで、症状が改善することがあります。認知症と同様、早期受診・診断がとても重要です。
【相談者】
Aさん 80歳女性。最近、家族から頻繁に物忘れがあると言われます。私も認知症になったのではないかと心配で相談に来ました。
超高齢社会を迎え、認知症を患う人は増えています。厚生労働省によると、認知症高齢者数は2012年に462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人でしたが、25年には約5人に1人が認知症になると推計しています。
■物忘れとの違いは?
物忘れがあると「認知症では?」と言われますが、病気に伴う物忘れだけではなく、加齢に伴うことで出現する物忘れもあります。
加齢に伴う物忘れは、年を重ねるごとに誰にも見られる現象です。出来事などの一部を忘れますが、ヒントで思い出すことができます。一方、病気による物忘れは、出来事など全てを忘れてしまい、ヒントを出しても思い出すことができません(表)。
■種類は?
認知症は、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりすることで障害が起こり、日常生活を行う上で支障が出ている状態のことを指します。
認知症の代表的な種類としては、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症があります(図)。脳が障害される部位によって異なる症状を示します。
一番多く見られるアルツハイマー型認知症の特徴としては、70歳以上の女性に発症することが多く、ゆっくり進行するため、いつから病気になったかが分かりません。アルツハイマー型認知症になると、脳にある記憶を支配する脳の海馬が萎縮していきます。
症状は、初期段階から物忘れが目立ち、時間の間隔が分からなくなり、判断力や理解力も徐々に低下します。そのため、何度も同じ話を繰り返したり、道に迷ったりすることが増えていきます。
認知症の症状として、記憶障害・失語など脳の神経細胞の減少や破壊によって引き起こされる「中核症状」があり、全ての認知症の人に見られる症状があります。
他に、徘徊(はいかい)・抑うつなど本人の性格や背景、体調や環境などが影響し反応的に生じる「行動・心理症状」が存在します。これは、全ての認知症の方に見られるわけではありません。周囲の環境を整え、対応などを工夫することで、症状は緩和することがあります。
■症状は?
認知症は、突然に症状が現れる病気ではありません。前兆として、約束を忘れたり、通い慣れた道でも迷ったり、家族の名前が出てこなかったり、といったサインを出しています。そのため「おかしいな?」と思ったら、早めに受診することをお勧めします。
早期に認知症を発見し、薬の服用を開始することによって多くの場合、認知症の進行を遅らせることが可能です。また、認知症の原因となる病気によって適切な治療方法が異なるため、原因を早期に発見することが大切になります。
認知症でなくても、認知症に似た症状を示す病気があります。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫などで、これらを早期に適切に治療することで、症状が改善することがあります。認知症と同様、早期受診・診断がとても重要です。
認知症(中)~患者への接し方~
2018.4.17
不安や戸惑い理解して 安心感与え進行抑える
【相談者】
Kさん 50歳女性。母がアルツハイマー型認知症と診断されました。一緒にいると、同じことを何度も話すため、イライラして怒ってしまいます。私が怒ると、母は悲しそうな顔をして黙ってしまいます。母とうまく付き合う方法はありますか。
認知症になると、記憶力や判断力などが低下し、以前よりも物事をうまく行うことが難しくなってしまいます。
初期では、そのことを本人は理解されています。そのため、今までできていたことができなくなるいら立ちを感じ、これからどうなるのか不安な思いで過ごされています。
本人は、周囲の人に自身の変化を気づかれないようにと隠そうとされます。このような状況を家族が見れば、自分勝手になったようにも見るかもしれませんし、以前とは人格が変わったようにも見えるかもしれません。
■感情は?
また、認知症になっても本人の感情や心が失われたわけではないため、周囲の人に怒られると、悔しかったり悲しかったりと、人間なら誰でも持っている感情は以前と全く変わりません。自らの変化に戸惑い、不安を感じていることを理解してあげてください。
家族や周囲の人たちにとって大切なことは「忘れてしまうのは、本人のせいでなく、病気だから」ということを理解することです。本人の気持ちに寄り添った対応を心掛けることが必要です。
認知症の人への接し方のポイントを図のようにまとめました。参考にしてください。
■症状ごとの対応は?
(1)もの忘れ…食事を食べていないと言う場合
食事を取ったことを忘れてしまいます。このようなときに「さっき食べたでしょう」と否定をすると「私だけ食事を食べさせてもらえない」と思ってしまいます。「あら、そうでしたね」と受け入れ、軽い食事を出したり、おやつを出したりしてもよいでしょう。
(2)徘徊(はいかい)…理由もなく歩き回る場合
歩き回る原因があることが多いです。例えば、トイレなどの場所が分からなかったり、会社へ行くためだったり、食事の買い物へ行くためだったりと、さまざまな原因が考えられます。原因を明らかにするために、まず「どうしましたか」と本人に尋ね、歩き回る理由を確認することが必要です。徘徊を「ダメ」と制止するのではなく、「一緒に行きましょう」と見守ったり、目的の場所まで誘導したりするのがよいでしょう。
(3)被害妄想…「ものが盗まれた」など言いだす場合
「置き忘れたんでしょう」などと怒るのは逆効果です。「私が困っているのになぜ怒るのか」などと考えてしまいます。また、「ここにあるでしょ」と、すぐに見つけてしまうと「こんな簡単に見つけたのだから、やっぱり盗んで隠した」と思い込んだりします。そんなときは「それは大変!」と共感してあげることがよいでしょう。一緒に探して、本人が見つけ出せるように「この引き出しの中は?」などと誘導し、見つかったら一緒に喜んだりするといいでしょう。
認知症の人は、自分を理解して接してくれる人を頼りにしています。その人に対し、常に安心感を与え信頼感を築くことにより、結果として認知症の進行を遅らせ、不穏や暴言などのさまざまな行動・心理症状も軽減することができるでしょう。
【相談者】
Kさん 50歳女性。母がアルツハイマー型認知症と診断されました。一緒にいると、同じことを何度も話すため、イライラして怒ってしまいます。私が怒ると、母は悲しそうな顔をして黙ってしまいます。母とうまく付き合う方法はありますか。
認知症になると、記憶力や判断力などが低下し、以前よりも物事をうまく行うことが難しくなってしまいます。
初期では、そのことを本人は理解されています。そのため、今までできていたことができなくなるいら立ちを感じ、これからどうなるのか不安な思いで過ごされています。
本人は、周囲の人に自身の変化を気づかれないようにと隠そうとされます。このような状況を家族が見れば、自分勝手になったようにも見るかもしれませんし、以前とは人格が変わったようにも見えるかもしれません。
■感情は?
また、認知症になっても本人の感情や心が失われたわけではないため、周囲の人に怒られると、悔しかったり悲しかったりと、人間なら誰でも持っている感情は以前と全く変わりません。自らの変化に戸惑い、不安を感じていることを理解してあげてください。
家族や周囲の人たちにとって大切なことは「忘れてしまうのは、本人のせいでなく、病気だから」ということを理解することです。本人の気持ちに寄り添った対応を心掛けることが必要です。
認知症の人への接し方のポイントを図のようにまとめました。参考にしてください。
■症状ごとの対応は?
(1)もの忘れ…食事を食べていないと言う場合
食事を取ったことを忘れてしまいます。このようなときに「さっき食べたでしょう」と否定をすると「私だけ食事を食べさせてもらえない」と思ってしまいます。「あら、そうでしたね」と受け入れ、軽い食事を出したり、おやつを出したりしてもよいでしょう。
(2)徘徊(はいかい)…理由もなく歩き回る場合
歩き回る原因があることが多いです。例えば、トイレなどの場所が分からなかったり、会社へ行くためだったり、食事の買い物へ行くためだったりと、さまざまな原因が考えられます。原因を明らかにするために、まず「どうしましたか」と本人に尋ね、歩き回る理由を確認することが必要です。徘徊を「ダメ」と制止するのではなく、「一緒に行きましょう」と見守ったり、目的の場所まで誘導したりするのがよいでしょう。
(3)被害妄想…「ものが盗まれた」など言いだす場合
「置き忘れたんでしょう」などと怒るのは逆効果です。「私が困っているのになぜ怒るのか」などと考えてしまいます。また、「ここにあるでしょ」と、すぐに見つけてしまうと「こんな簡単に見つけたのだから、やっぱり盗んで隠した」と思い込んだりします。そんなときは「それは大変!」と共感してあげることがよいでしょう。一緒に探して、本人が見つけ出せるように「この引き出しの中は?」などと誘導し、見つかったら一緒に喜んだりするといいでしょう。
認知症の人は、自分を理解して接してくれる人を頼りにしています。その人に対し、常に安心感を与え信頼感を築くことにより、結果として認知症の進行を遅らせ、不穏や暴言などのさまざまな行動・心理症状も軽減することができるでしょう。
認知症(下)~予防~
2018.4.24
生活習慣病に注意 食生活を見直し運動も
【相談者】
Mさん 65歳女性。先日、定年退職しました。「これからどのように過ごそうか」と思っています。子どもたちからは「何もしないと認知症になるよ」と言われました。本当に認知症になりますか。
認知症の原因は、いまだ不明な点が多くあります。種類としては脳が障害を受けて起こるアルツハイマー型やレビー小体型と、脳の血管が障害を受けて起こる脳血管性に分かれます。
■アルツハイマー型は?
過半数を占めるアルツハイマー型認知症を発症させる主な原因は、不要なタンパクであるアミロイドβの存在が確認されています。通常、脳で作られ分解されていたアミロイドβタンパクは、年齢を重ねるごとに徐々に分解機能が低下し、神経細胞の周りにたまり、老人斑(はん)といわれるシミを脳の中に作ります。
このような状態が何年も続くと、今度は神経細胞そのものが影響を受けて機能が失われます。
■血管性は?
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で起こります。そのため、脳梗塞や脳出血の原因となる高血圧や動脈硬化、肥満などに注意が必要となります。
認知症の原因はさまざまですが、やはり生活習慣病の予防が大きく関係します。例えば高血圧の人はそうでない人に比べて約3倍、糖尿病の人は約2倍アルツハイマー型認知症になるといわれています。慢性的な精神的ストレスも脳の血流を悪くし、認知症発症の原因となります。
■気を付けることは?
(1)生活習慣病予防にも良いとされる食生活の見直しが重要となります。できれば野菜は毎食、牛乳などの乳製品、納豆や豆腐などの大豆製品も毎日取るとよいでしょう。EPA、DHAを多く含む青魚やビタミンA、C、Eが多く含まれる野菜や果物を多く食べるのもよいでしょう。塩分や油分はなるべく控え、よくかんで腹七分目くらいに抑えることをお勧めします。少量のお酒はよいといわれていますが、飲み過ぎには注意が必要です。
(2)週2、3回以上、30分以上の運動をするとよいでしょう。主に歩くことが勧められています。他にもジョギングや水泳などの有酸素運動が効果的です。適度に運動をすることで体内の血流が改善され、神経細胞が刺激されるため、動脈硬化の予防や脳の老化予防にもつながります。
(3)頭を使いながら指先を動かす知的活動はとても大切で、神経細胞を活性化するのによいとされています。具体的には将棋や囲碁、裁縫などが挙げられます。新聞や本を読んだり、ゲームをしたりするなど、頭を使う生活を心掛けることが必要となります。
(4)近所の人や友人との交流も大切です。多くの人と会話をすることで脳は活性化すると言われています。日常の家族との会話に加え、多くの人と出会い、たくさんの会話を楽しむことでより効果を発揮します。
多くのことを考え、くよくよするのではなく、明るくストレスをためないような生活を送り、認知症を予防しましょう。
【相談者】
Mさん 65歳女性。先日、定年退職しました。「これからどのように過ごそうか」と思っています。子どもたちからは「何もしないと認知症になるよ」と言われました。本当に認知症になりますか。
認知症の原因は、いまだ不明な点が多くあります。種類としては脳が障害を受けて起こるアルツハイマー型やレビー小体型と、脳の血管が障害を受けて起こる脳血管性に分かれます。
■アルツハイマー型は?
過半数を占めるアルツハイマー型認知症を発症させる主な原因は、不要なタンパクであるアミロイドβの存在が確認されています。通常、脳で作られ分解されていたアミロイドβタンパクは、年齢を重ねるごとに徐々に分解機能が低下し、神経細胞の周りにたまり、老人斑(はん)といわれるシミを脳の中に作ります。
このような状態が何年も続くと、今度は神経細胞そのものが影響を受けて機能が失われます。
■血管性は?
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で起こります。そのため、脳梗塞や脳出血の原因となる高血圧や動脈硬化、肥満などに注意が必要となります。
認知症の原因はさまざまですが、やはり生活習慣病の予防が大きく関係します。例えば高血圧の人はそうでない人に比べて約3倍、糖尿病の人は約2倍アルツハイマー型認知症になるといわれています。慢性的な精神的ストレスも脳の血流を悪くし、認知症発症の原因となります。
■気を付けることは?
(1)生活習慣病予防にも良いとされる食生活の見直しが重要となります。できれば野菜は毎食、牛乳などの乳製品、納豆や豆腐などの大豆製品も毎日取るとよいでしょう。EPA、DHAを多く含む青魚やビタミンA、C、Eが多く含まれる野菜や果物を多く食べるのもよいでしょう。塩分や油分はなるべく控え、よくかんで腹七分目くらいに抑えることをお勧めします。少量のお酒はよいといわれていますが、飲み過ぎには注意が必要です。
(2)週2、3回以上、30分以上の運動をするとよいでしょう。主に歩くことが勧められています。他にもジョギングや水泳などの有酸素運動が効果的です。適度に運動をすることで体内の血流が改善され、神経細胞が刺激されるため、動脈硬化の予防や脳の老化予防にもつながります。
(3)頭を使いながら指先を動かす知的活動はとても大切で、神経細胞を活性化するのによいとされています。具体的には将棋や囲碁、裁縫などが挙げられます。新聞や本を読んだり、ゲームをしたりするなど、頭を使う生活を心掛けることが必要となります。
(4)近所の人や友人との交流も大切です。多くの人と会話をすることで脳は活性化すると言われています。日常の家族との会話に加え、多くの人と出会い、たくさんの会話を楽しむことでより効果を発揮します。
多くのことを考え、くよくよするのではなく、明るくストレスをためないような生活を送り、認知症を予防しましょう。