第19回 食後高血糖
糖尿病に関する話 ~食後高血糖(上)~
2017.11.14
糖尿病発症前のサイン 心臓病・脳卒中の危険
【相談者】
Aさん 55歳男性。今まで糖尿病と言われたことはなく、自覚症状もありません。「食後高血糖」という言葉も耳にしますが、健康診断では分からないと聞きます。自分は大丈夫か心配です。
11月14日は世界糖尿病デーに制定されており、この日を中心に世界中でさまざまな行事を通して、糖尿病の予防や治療継続の重要性について啓発されています。
国内では「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」、いわゆる糖尿病予備群が、それぞれ1千万人と推計されることが厚生労働省から発表されました。これは両方合わせると国民の6人に1人が糖尿病の可能性があることになります。
他人事だと思わずに、皆さんも糖尿病の検査・治療をしっかり受けてください。
■なぜ怖い?
糖尿病とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)を正常に保つインスリンというホルモン分泌が悪くなり、血糖値が異常に高くなる病気です。適切な治療をしないと、全身の臓器や血管に影響が出て、脳梗塞や心筋梗塞、失明や腎不全、足の切断などを引き起こすことがあります。
近年、糖尿病の前段階とも言える「食後高血糖」の危険性について、広く知られるようになってきました。検査値のグラフの形から「血糖値スパイク」とも言われています。一般的な健康診断では、空腹時血糖やHbA1cを測定していますので、食後高血糖については分からないことが多いので注意が必要です。
■数値は?
健康な人の空腹時血糖値は80~110mg/dlです。食事によって上昇した血糖値が2時間たっても低下せず、140mg/dL以上の高い値が続く状態が食後高血糖です。日本人の糖尿病予備群の特徴として、空腹時血糖値よりも食後の血糖値が高くなる傾向にあります。
さらに糖尿病を発症する前は、まず食後の血糖値が高くなり、発症後空腹時の血糖値が上昇する傾向にあります。そのため食後高血糖は、糖尿病の「始まりのサイン」と言われています。
空腹時の血糖値が高い人よりも、食後の血糖値が高い人のほうが、心臓病や脳卒中の危険が高いことが分かっています。逆に、食後の高血糖をしっかりコントロールすると、動脈硬化の進行が抑えられると同時に、糖尿病になりにくくなることが報告されています。
■検査は?
食後高血糖を見つける確実な方法は、病院でブドウ糖負荷試験の検査を受けることです。ブドウ糖(75グラム)を飲む前と飲んでから30分後、1時間後、2時間後の血糖値を調べるもので、糖尿病の診断にもなります。
現在「血糖自己測定器」で血糖測定をされている人は時々食後の血糖値を測定してみてください。かかりつけの医療機関がある場合、空腹時の採血ばかりではなく、食後のタイミングで採血して血糖値を調べることもできます。
尿検査で尿糖を調べることで、食後の高血糖があるかどうかを知ることもできます。尿糖試験紙は、薬局で30枚入りで千円ほどで購入することができます。一般に血糖値が160~180mg/dl以上になると、尿に糖が出始めます。
個人差もありますので、陽性反応が出たら、医療機関で詳しい検査を受けてください。ただし、現在糖尿病の内服治療をされている人の中には、尿中に糖を出す薬を処方されている場合がありますので主治医に確認してください。
食後高血糖の状態は、糖尿病になってしまう前に発症を予防できるチャンスです。一刻も早く検査を受けて、生活習慣の改善など適切な改善対策を行いましょう。
【相談者】
Aさん 55歳男性。今まで糖尿病と言われたことはなく、自覚症状もありません。「食後高血糖」という言葉も耳にしますが、健康診断では分からないと聞きます。自分は大丈夫か心配です。
11月14日は世界糖尿病デーに制定されており、この日を中心に世界中でさまざまな行事を通して、糖尿病の予防や治療継続の重要性について啓発されています。
国内では「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」、いわゆる糖尿病予備群が、それぞれ1千万人と推計されることが厚生労働省から発表されました。これは両方合わせると国民の6人に1人が糖尿病の可能性があることになります。
他人事だと思わずに、皆さんも糖尿病の検査・治療をしっかり受けてください。
■なぜ怖い?
糖尿病とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)を正常に保つインスリンというホルモン分泌が悪くなり、血糖値が異常に高くなる病気です。適切な治療をしないと、全身の臓器や血管に影響が出て、脳梗塞や心筋梗塞、失明や腎不全、足の切断などを引き起こすことがあります。
近年、糖尿病の前段階とも言える「食後高血糖」の危険性について、広く知られるようになってきました。検査値のグラフの形から「血糖値スパイク」とも言われています。一般的な健康診断では、空腹時血糖やHbA1cを測定していますので、食後高血糖については分からないことが多いので注意が必要です。
■数値は?
健康な人の空腹時血糖値は80~110mg/dlです。食事によって上昇した血糖値が2時間たっても低下せず、140mg/dL以上の高い値が続く状態が食後高血糖です。日本人の糖尿病予備群の特徴として、空腹時血糖値よりも食後の血糖値が高くなる傾向にあります。
さらに糖尿病を発症する前は、まず食後の血糖値が高くなり、発症後空腹時の血糖値が上昇する傾向にあります。そのため食後高血糖は、糖尿病の「始まりのサイン」と言われています。
空腹時の血糖値が高い人よりも、食後の血糖値が高い人のほうが、心臓病や脳卒中の危険が高いことが分かっています。逆に、食後の高血糖をしっかりコントロールすると、動脈硬化の進行が抑えられると同時に、糖尿病になりにくくなることが報告されています。
■検査は?
食後高血糖を見つける確実な方法は、病院でブドウ糖負荷試験の検査を受けることです。ブドウ糖(75グラム)を飲む前と飲んでから30分後、1時間後、2時間後の血糖値を調べるもので、糖尿病の診断にもなります。
現在「血糖自己測定器」で血糖測定をされている人は時々食後の血糖値を測定してみてください。かかりつけの医療機関がある場合、空腹時の採血ばかりではなく、食後のタイミングで採血して血糖値を調べることもできます。
尿検査で尿糖を調べることで、食後の高血糖があるかどうかを知ることもできます。尿糖試験紙は、薬局で30枚入りで千円ほどで購入することができます。一般に血糖値が160~180mg/dl以上になると、尿に糖が出始めます。
個人差もありますので、陽性反応が出たら、医療機関で詳しい検査を受けてください。ただし、現在糖尿病の内服治療をされている人の中には、尿中に糖を出す薬を処方されている場合がありますので主治医に確認してください。
食後高血糖の状態は、糖尿病になってしまう前に発症を予防できるチャンスです。一刻も早く検査を受けて、生活習慣の改善など適切な改善対策を行いましょう。
糖尿病に関する話 ~食後高血糖(下)~
2017.11.21
食事や運動で改善 ストレス・睡眠不足に注意
【相談者】
Yさん 45歳女性。新聞で食後高血糖について知りました。健康診断では異常を指摘されたことがないので、病院で一度、検査を受けたいと思っています。もし食後高血糖だった場合、対策はあるのでしょうか。
糖尿病でない健康な人でも、食後に血糖値が上がることは正常なことです。食事からとったブドウ糖が血液の中で全身に運ばれて、さまざまな臓器や細胞のエネルギーとして働きます。しかし糖尿病あるいは糖尿病予備軍の人は、常に血糖値が高い、または本来であれば140mg/dl以上にならないはずの食後血糖値がそれよりも高くなってしまいます。
以前から食後高血糖は、糖尿病になる前のサインとして知られていましたが、それだけでなく食後高血糖の状態であることが、動脈硬化になりやすく心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。一部の認知症やがんなどにも影響を及ぼします。
■検査は?
健康診断では空腹時血糖を調べるため、自分が食後高血糖なのかそうでないかは分かりません。病院で経口ブドウ糖負荷試験の検査を受けることが確実に分かる方法です。薬局などに設置されている「ゆび先セルフ測定室」を利用することや、尿糖試験紙を買って自分で調べてみることも目安になります。
もし自分が食後高血糖の状態だったり、予防したい場合は、食事や運動、生活を見直すことで改善することができます。
食事は、1日3食とること、食べる順番、量と食べる速さを工夫することがよいでしょう。
■食べ方は?
朝食を抜いたりしてまとめ食いをすると、一度にたくさん食べることになり、急激に血糖値が上がり、下がるのに時間もかかります。1日3食、規則正しい時間に食べることが大事です。
ベジ・ファーストと言われる食事方法は、ベジタブル・ファーストのことで、野菜から先に食べると血糖値の上昇が緩やかになり、満腹感も得られやすいので食べ過ぎを防ぐことにもなります。具体的には、野菜や海藻類、キノコ類を食べてから、肉や魚、最後にご飯やパンなどといった順番で食べるとよいです。
ただし、野菜の中でも、ジャガイモやニンジン、トウモロコシなどは血糖値の上昇度が高いので注意が必要です。ご飯とラーメンといった炭水化物の「重ね食い」も食後高血糖を招く食べ方です。外食をする場合は、主食、副食、野菜などバランスの良いメニューを選ぶのもコツです。
腹八分目を心掛けて、ゆっくり時間をかけて取るようにしましょう。
食後に10分程度のウオーキングや軽い運動をすると効果的であることが報告されています。1日に何万歩も歩くことはなかなか難しいと思いますが、食後の軽い運動は始めやすいのではないでしょうか。血液中の糖分の多くは筋肉の細胞に取り込まれてエネルギーになるので、日頃から運動して筋肉をつけておくと血糖値が上がりにくくなります。
■注意点は?
ストレスや睡眠不足、夜更かしもホルモンの影響などで血糖値が上がりやすくなります。なるべくストレスをためずに規則正しい生活を心掛けましょう。
糖尿病になってしまうと治療費など大きな負担になります。健康診断で血糖値の異常を指摘されている人は医療機関への早期受診をお勧めします。糖尿病になる前のサインである食後高血糖の段階であれば食事、運動、生活の改善で元に戻すことも可能です。ぜひ何か一つでも生活習慣の改善に取り組んでいただければと思います。
【相談者】
Yさん 45歳女性。新聞で食後高血糖について知りました。健康診断では異常を指摘されたことがないので、病院で一度、検査を受けたいと思っています。もし食後高血糖だった場合、対策はあるのでしょうか。
糖尿病でない健康な人でも、食後に血糖値が上がることは正常なことです。食事からとったブドウ糖が血液の中で全身に運ばれて、さまざまな臓器や細胞のエネルギーとして働きます。しかし糖尿病あるいは糖尿病予備軍の人は、常に血糖値が高い、または本来であれば140mg/dl以上にならないはずの食後血糖値がそれよりも高くなってしまいます。
以前から食後高血糖は、糖尿病になる前のサインとして知られていましたが、それだけでなく食後高血糖の状態であることが、動脈硬化になりやすく心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。一部の認知症やがんなどにも影響を及ぼします。
■検査は?
健康診断では空腹時血糖を調べるため、自分が食後高血糖なのかそうでないかは分かりません。病院で経口ブドウ糖負荷試験の検査を受けることが確実に分かる方法です。薬局などに設置されている「ゆび先セルフ測定室」を利用することや、尿糖試験紙を買って自分で調べてみることも目安になります。
もし自分が食後高血糖の状態だったり、予防したい場合は、食事や運動、生活を見直すことで改善することができます。
食事は、1日3食とること、食べる順番、量と食べる速さを工夫することがよいでしょう。
■食べ方は?
朝食を抜いたりしてまとめ食いをすると、一度にたくさん食べることになり、急激に血糖値が上がり、下がるのに時間もかかります。1日3食、規則正しい時間に食べることが大事です。
ベジ・ファーストと言われる食事方法は、ベジタブル・ファーストのことで、野菜から先に食べると血糖値の上昇が緩やかになり、満腹感も得られやすいので食べ過ぎを防ぐことにもなります。具体的には、野菜や海藻類、キノコ類を食べてから、肉や魚、最後にご飯やパンなどといった順番で食べるとよいです。
ただし、野菜の中でも、ジャガイモやニンジン、トウモロコシなどは血糖値の上昇度が高いので注意が必要です。ご飯とラーメンといった炭水化物の「重ね食い」も食後高血糖を招く食べ方です。外食をする場合は、主食、副食、野菜などバランスの良いメニューを選ぶのもコツです。
腹八分目を心掛けて、ゆっくり時間をかけて取るようにしましょう。
食後に10分程度のウオーキングや軽い運動をすると効果的であることが報告されています。1日に何万歩も歩くことはなかなか難しいと思いますが、食後の軽い運動は始めやすいのではないでしょうか。血液中の糖分の多くは筋肉の細胞に取り込まれてエネルギーになるので、日頃から運動して筋肉をつけておくと血糖値が上がりにくくなります。
■注意点は?
ストレスや睡眠不足、夜更かしもホルモンの影響などで血糖値が上がりやすくなります。なるべくストレスをためずに規則正しい生活を心掛けましょう。
糖尿病になってしまうと治療費など大きな負担になります。健康診断で血糖値の異常を指摘されている人は医療機関への早期受診をお勧めします。糖尿病になる前のサインである食後高血糖の段階であれば食事、運動、生活の改善で元に戻すことも可能です。ぜひ何か一つでも生活習慣の改善に取り組んでいただければと思います。